夏といえばいつも想い出すのは、ロバート・フランクの「 U.S.285,New Mexico
」という写真で、これは『 夏 〜 ドライヴ 〜 ビートニク 』と思いを馳せる人には、ある共通の想いを連想させる、まさに「放浪の至福」な一枚。
夏がなぜ自分にとって放浪の季節でなくなってしまったかは、やはり就職してしまったからか。
そういえば学生の時、どうしてもロバート・フランクの最初の写真集「
The Americans 」が欲しくて( 日本版は絶版になっていた )、洋書屋さんを片っ端から回っていた頃があった。
ようやく手に入れワクワクしながら夢中でページをめくり、ひたすらモノクロームな写真に憧れていた二十歳そこそこだった自分。結局アメリカ版とその後出た日本版(
でも瞬く間に売り切れ、やっぱり入手困難になってしまった )の二冊を手に入れ、まだ見ぬ広い大地を歩き続けることを夢見ていた頃。
知らぬ間に時が経って、もうあの頃ほど大地は広くなく、歪んだフレームにアメリカの生々しい現実を切り取った手法も、その厳しさや切なさも(
そして幾ばくかの希望も )、現代においてどのくらい伝わってくるだろうか、ということを考えるようになってしまった自分は、もう確実に年を取り、確実にモノクロームに色褪せていく。
でもまだ、ドライブは終わったわけではない。「 The
Americans 」をもう一度広げてみる。この写真集の序文を書いたジャック・ケルアックの言葉を思い出してみればいい。彼らは「こことは違うどこかへ」行こうとした。写真は過去の一瞬を切り取り、別れを告げながら次の場所へと向かわせる。永遠の夏の中を、いつまでも歩き続けている。
(2000.8.6.)
