Neo Acoustic
           The Style Council / Cafe Bleu (1984) 
 
   『 ソウル・ミュージックで夢見た未来 』

 

 サイトマップのところでも書いたけれど(一応あのページのNorth Marine Driveのところは、このHPの宣誓みたいなもの、です)、スタイル・カウンシルをリアルタイムで体感できたことは、本当に幸せなことだった。ポール・ウェラーというと、人気絶頂期に解散させてしまったジャムだよ、というロック・ファンが多いけれど、自分としては断然スタイル・カウンシル。数枚のシングルの後リリースされたこのファースト・アルバムは、いろいろな意味でその後の行く先を決定付けたアルバム。

 今でこそ当たり前のようになった、ソウルを下敷きとしてジャズやボサ・ノバやR&Bのエッセンスを散りばめた音作り。それをいち早く完成させたのがスタイル・カウンシルだった。特にこのファーストはバラエティに富み、やりたいことを思いつく順にやった、とでもいうような多様性がある。なおかつ、それがスタイリッシュに洗練されているのが、彼らの資質。だが、「元祖おしゃれバンド」なんていう言われ方とは一線を画した背景があることこそ、彼ら最大の特徴だった。

 「イギリスのソウル・レーベルをスタートさせたいんだ。ロックが持っていたおかしな幻想ではなく、本当の夢を与えるような音楽が作りたい」

 ポール・ウェラーはそう言っていた。この発言の背景には、あれほど熱気を運んできてくれたパンクのなし崩し的な崩壊があり、深刻な社会不況という閉塞感があった。だからこそウェラーは、ロック・バンド「ジャム」を解散させたのだし、ずっと憧れてきたソウル・ミュージックを自分たちなりに再構築することで、再び音楽による「革命」を起こそうとしたのだと思う。

 80年代後半には、まさにそんなソウル・ミュージックをベースとした音作りがブームとなった。しかしそれは意識的に脱パンクから始まったスタイル・カウンシルの音作りとは異なり、耳障りのよいトレンディなものでもあった。彼ら自身も、徐々にブラック色が強くなっていくたび、初期の自由度や絶妙なバランスが失われてもいく。そして何と言っても、パンク同様、音楽で世界を変える夢は、ただの理想となってしまった。

 (しかし90年代に入って、ここで発芽したものがアシッド・ジャズやフリーソウルの一大ムーブメントとなって、80年代とは違った魔法のリズムを獲得していくことになる)

 リリースから18年経った今、このアルバムを振り返ってみると、幾分か切なくもなる。でも確かにここには、これから先に託そうとした未来があり、静かでも熱く燃えていた情熱がある。それは僕に十分に夢を見させてくれたし、今までに何百回も、励ましてくれもしたのだ。