Prefab Sprout / Steve Mcqueen (1985)
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僕が高校生だった80年代後半、すでに主だったネオ・アコースティックのバンド群は姿を消し、殆ど孤軍奮闘のようだったプリファブ・スプラウト。そんな彼らもやがて独自のポップ路線をいき、ついには極彩色のポップ玉手箱の世界に到達するわけだけど、これはまだ生演奏の匂いの立ち込めた、むせ返るように若く、良くも悪くも「青さ」の強く出たセカンド・アルバム。 文学青年そのままの、揺らぎ、悩み、能書きを並べ、ゆえにその瞬間にしかないきらめきを、繊細な美しいメロディに乗せ、時に屈折しながら紡ぐ。それはこの世界の中でなんと弱く、不確かなことか。けれどまたその弱さゆえ、それを精一杯歌った時の、なんと潔いこと。 若さや未熟さゆえ、世界に対して恐る恐る対峙し、小さな言葉を力いっぱい歌う。その時、閉じていた世界は少しだけ開き、幾つかの光が燦然と輝きだす。ここには数少ないきらめきを無数のかけらの中からすくい取った奇跡的な瞬間があり、それを形にすることが出来た幸運な感性がある。青春はなんと残酷で気恥ずかしく、そしてこんなにもいとおしいのか。その答えの一つは、このアルバムの中に詰まっている。 |