Song of the wind

 初めて友だちだけで港に行ったのは、高校1年の時だった。朝早く電車で出かけ、まず鎌倉まで行き、江ノ電に乗って海沿いを走った。

 浜辺を歩き、江ノ島で昼食をとった。4人で行ったのだけれど、2人は女の子だった(2人とももう結婚している)。

 それからモノレールに乗り、大船まで出て根岸線(今は京浜東北線)に乗り換え、石川で降りた。山下公園まで歩き、港を眺めた。船の灯りが綺麗だった。まだベイブリッジは造っている途中だった。

 もうすぐ春が来る頃だった。風が吹き抜けた。僕たちは16才だった。

 中華街で夜御飯を食べ、それから地元まで帰った。もうだいぶ遅い時間だった。見送った女の子の笑顔と、去っていく後ろ姿を、今でも覚えている。

 正確に言えば、まだ覚えていたことをさっき思い出した。懐かしい写真を見ていて、海の景色を見ていたら思い出した。もちろんいろいろなことは変わっていて、そして記憶の中の風景だけ変わらない。

 



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