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『 もう戻っては来ない日々を 』 | |
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うねる波、はじけ飛ぶ水しぶき、砂浜に照りつける太陽、車のシートの匂い、そして何より、仲間たちと過ごしたあの日々・・。 フィルムの中には、永遠のようだった夏と、やがて変わっていく季節の移ろいが、鮮やかに、切ないほど美しく、刻み込まれている。
海辺で育った3人の、生粋のサーファーたち。夢中でサーフボードに乗っていた頃は、毎日が楽しくて仕方なかった。仲間たちとのパーティーでのばか騒ぎ、めちゃくちゃな運転を続けるドライブ、素敵な女性との出会い、そしてどんなときも身近にあった波。 けれどそれは知らぬ間に、気づかない内に、遠く違うシーズンの中に、置かれてきてしまったものだった・・。
いつしかベトナム戦争が遠い異国の出来事ではなくなり、月日は容赦なく流れ、様々な傷跡を残して過ぎ去っていく。仕事もうまくいかず、生活していかなければならないのに何をすべきか見つけられず、自分たちがいつまでも同じままではいられないことを、嫌というほど思い知る。あの頃は、こんな毎日など思いもしなかったというのに−。 でもここには、甘い感傷などない。彼らもそれに甘んじることはない。そこには見据えるべき日常があり、乗り越えなければならない現実があり、生きていく今がある。 多くのことを受け入れながら、着実に生きていこうとする彼ら。季節が過ぎ去った後、もう一度伝説の波のために集まり、無心で大波の中へと飛び込む。それは、通り過ぎた青春の決着をつけるために。そして最後のシーン、精一杯自分たちの海とぶつかり、その季節に一区切りつけながら、またそれぞれに別れ去っていく彼らの後ろ姿は、どんな海よりも蒼く、その切なさは、限りなく深い。
波は変わらずに繰り返し、海は今日も素晴らしい。人だけが変わっていく。でも、その波に乗れば、自分たちの想いはいつまでもそこにあって、その向こうには行くべき場所も見える。 そして、彼らの中に流れる、波乗りの誇りと友情は、いつまでも決して変わらない。
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