Au Revoir Les Enfants
『 ただ、手を振るだけ・・』 | |
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「さよなら子どもたち」を観たのは15歳のときで、映画館で観た。今思うと、その年から始まった高崎映画祭の先行上映だった。 初めてポスターを見たとき、これは名作に違いないと思った。タイトルも良かった。 はたして、実際観た映画は、観る前の予想とは違っていた。子供時代に別れを告げる映画だと思っていたのだが、違っていた。 いや、ある意味では、そうでもある。少年時代の、夢と同等でしかないここから外の広大な世界、その中での、自分たちにとっての大冒険や、一瞬だけ何もかもを越えられそうだった淡い期待・・。場面は淡々と、けれど夢中だったあの頃を、静かにくっきりと浮かび上がらせていく。だがそれは、やがて、「さよなら、子どもたち・・」となっていく世界なのだ。 不意に別れが訪れ、その意味が明らかになるとき、それまであったものがまったく別の何かに変わってしまう。楽しかった日々や、友情や、ずっと続くはずだった素敵な秘密が。 何も出来ず、ただ強制収容所へ連れられていく友を見送ることしか出来ないとき、現実の前にある自分の無力さと、確実に何かを捨てなければならないことが分る。ただ立ち尽くしながら、ぼんやりと、けれど痛いほどに。生きるには外の世界の巨大な闇を知らなければならないこと。時に重大な何かを、簡単に受け入れてしまうこと。そして必ずしも、荒々しく戦闘的になることだけが、闘いではないのだということを・・。 さよならはいつも寂しい。何かはそこで終わり、まったく違う別の何かが始まる。だからといって嫌だと泣き叫んで現実が変わるわけでもない。それでも、泣き叫ぶことが出来ないとき、その別れを、あの子ども時代を、決して忘れはしない。
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