(RIDERSCLUB誌 No.149 1989年 表紙)
アニバーサリーって手塗りだって、誰か言ってた・・。
隠れ名車と呼ぶには少々語弊があるが、生い立ち、機体の特性、維持管理面など、特殊な事項が多いので、ここに置いてみた。
日本人が作った、エゴ丸出しの提案型シングルロードスポーツ。
生まれも育ちも、数奇なバイクだ。
バイクで走り操ること、そのものを掌に納めたい人にとっては、ドカティなどよりもダイレクトで、いいかもしれない。
軽さ小ささ強さといった物理的な優位性と、設計者が施したであろう各部のエゴとの相克は、この機種独特で楽しめそうだ。
維持管理の実際はどうなんでしょうかね。興味はあるが、調査は未達です。(居ますね?達人が。教えて下さい〜。)
(当時のカタログより)
以前は、アメリカンと言えども、メカニズムに容赦はなかった。
例えば、このVZ。
エンジンは水冷DOHC4バルブ、ツインプラグ。ショートストロークで圧縮比は10を超える。カムチェーンは架け替えで減速しているのでギアが小さく、狭角バルブを収めるヘッドはコンパクトにまとまっている。55°の変則的なVツインだが、一次バランサーにラバーマウントで、振動を車体に伝えない。低速でのドコドコ感と、高速での鋭い走りを両立している。
それやこれや、スペックなどがほのめかす印象の通りに、実はこいつ、相当に速い。
イトシンさんが昔、「随分スピードが出てしまうので、高速を走っていると、ステップに置いた靴底に当たる風圧で、足が浮いて来る」と書いていた。
その位、速いのだ。(笑)
ハイメカ高性能アメリカンという、日本独自のカテゴリーを、Vツインのアーキテクチャで、しかも750ccで実現していた。(750にしては、相当デカいんだが実は。)
さらに。油圧タペットにシャフトドライブ。メンテフリーも抜かりない。
こんな力作で、定価は70万を切っていた。だのに売れなかった。
(北米では売れたんだろうか・・。)
その後、ブロスなどVツインスポーツが国産でも出始めたのだが、私は、カワサキがこのエンジンで「本物」を作ってくれることを、ひそかに期待していた。
そうはならなかったが。
(当時の広告より)
VZの仮想?敵はこいつだったろうか。NV750。
これも当時としてはハイメカだったが、バッテリーがスペシャルサイズなど、デザインコンシャスが過ぎた印象だった。が、小柄なオジさんでもフォワードステップに足が届く「ジャストサイズ」で、実際に乗ってみると、印象は良かったらしい。当時のオーナー殿のインプレッション「あんまりラクなので、クルマに乗るのが嫌になった。」(笑)
振り返れば、かつての和製アメリカンは、気楽さと性能、デザインやサイズも、ハーレーとは別路線の独自のコンセプトで、それなりに熟成できていたように思う。
それなのに今、日本製アメリカンといえば、ふくらし粉の残像のような、テキトーなものがほとんどだ。(販売でハーレーにああもやられては、仕方ない面もあろうが・・。)
ジャストサイズでゴージャスな高性能アメリカン。
退職金を握った団塊世代あたりに、飽きずに乗り(換え)続けてもらうには、巨大スクーターなんかよもり有望じゃないか、とも思うのだが。
雨にも負けず風にも負けず、リアのスライドにも負けず、いつも静かにカッ飛ばす。そんなジジイに、私はなりたい。
なんて、ささやかな?夢を、残しておいてほしいとも思うのだが・・。
(当時のカタログより)
珍しく、スタイルでバイクを選んでみました。
これを初めて見た時は、衝撃だった。
黒くて四角くて、低くて長あい。
こんなのはバイクじゃない。ベンチだ。
無意味に座ってやる。(笑)
実際に走っている所を見る限り、ハンドリングなどは決してほめられたもんではない。今、想像してみても、このバイクでのコーナリングは「億劫」だ。
そのせいだろうか?型変わりする度に、コンサバなアメリカンに変貌して行った。
逆に、スタイリングのインパクトは減って行ったように思う。
水冷パラ四でのアメリカンカテゴリーへのトライとしては、評価できるかもしれない。
まあよい。こういったモデルは、格好さえ良ければ、大概は許されるものだ。
ジャケットやグラビアなどのビジュアルなメディアにも、結構使えそうなデザインだと思うのだが。見たことないすね。
まあ今やろうとしても、さほどにキレイな中古は、もうないかな。
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