イタリアンスクーター試乗記


【はじめに】

イタルジェットのJetset150というスクーターに試乗して以来、国産とは違ったフィーリング(走/曲/止のベストバランス)のイタリアンスクーターが気になっていました。カワサキとアプリリアとイタリアンスクーターを扱う(不思議なラインナップ・・)ショップ主催の試乗会があるのこと。早速、一気乗りにトライしてみました。

会場が住宅地にある自動車教習所ということもあり、コースは狭かったです。数台を先導車(2輪AT教習車:Skywave)が束ねて、右コーナーが大半のコース(左は1箇所、右4箇所)を5周する1回5分程度の試乗です。クローズドコースなので、免許が無くても短時間の乗り方講習を受ければ、誰でも試乗可というイベントです。なので、ライディングスキル・年齢層は幅広く、いろんな方が来場していました。それと教習所の入校募集を兼ねているので、ちゃんと入校案内も配布されました。(笑)

それはさておき、かつてJetset150で体験したナチュラルフィーリングの加速、安心して効かせられるブレーキ、ハイトなライポジがなせるスタビリティ…と良いこと尽くめ(褒めすぎ?)のイタリアンスクーターは健在かを確認することにしましょう。


【インプレッション】

メーカー・モデル別に、コメントを記載します。
特に気に入ったモデルは、モデル名に☆印を付けました。「光るものあり」という意味ですが、参考と考えて下さい。

それと、動力性能の違いはインプレッションに影響があると考えましたので、試乗順序は小排気量からを心がけました。まずは、vespa LX125からでしたが、後半はそう言っていられず、250ccと500ccを行ったり来たりで、何でも来いって感じになってしまいました。


○ aprilia

Atlantic500
車格は大きく感じるが、高トルクを活かして普通に乗れる。跨ってみると巨大化しつつある国産250ccスクーターと変わりなく、外観の印象よりも軽快に走行可。国産車に近い唐突感を伴う発進をするものの、その代わりに他のイタリアンスクーターより高いゼロ加速感がある。但し走りこむとバンク角不足と感じるかも。国産ではないビッグスクーターを求める方に。

Scarabeo500
開けると勇ましい吸気音と、それに見合う加速性能。低速時に気を使わなくてよく、コーナーリング中も安定しているハンドリング。質感のあるメーター回り。そして高い収納性。外観は、どこかで会ったような懐かしさを覚えるデジャブスクーター。ジュノォ?ガレット?ファルコーネ・サファリ?…いや、高速を快適安心に走行できるスーパーカブと言えるかも。スクーター1台で、通勤とツーリングの両立を考えるなら、この1台。皆と同じビックスクーターじゃイヤという方にもお勧め。

Scarabeo250
低速時に気を使わなくてよいハンドリング。500よりも軽量なボディを活かして、軽快な走行が可能。センタートンネルが高くなっていくスクーター群の中にあって、低めなのが乗降性の良さを維持している。このモデルは500と兄弟車であることが判るハンドリング。エンジンは、200ccよりも50ccの排気量差を感じられるピアジオ新開発の250cc。

Sportcity200
ナチュラルフィーリングNo.1。初見で普通に乗れることも性能の1つ。強い自己主張は無いが、洗練さを感じるのはデザインのため?どのモデルにおいても、ある程度の大きさを感じるラージホイール車の中で、スクーターに近い小柄な印象。通勤快速に、この1台。


○ Gilera

RunnerVXR200
スポーツスクーター元祖。125cc車サイズに、200ccエンジンを搭載し、バイクに匹敵した「走る/曲がる/止まる」の性能を持つ。ここまでやらなくても…という気もするが、思い切りの良さに脱帽。但し、思い切っちゃったので、日常性や使い勝手の良さは小。とはいえ、ラージホイール車とは異なる志向で、ハンドリング良好に仕上げたことは好感度大。小径ホイールのオートバイと考えた方がよいかも。スクーターで峠を走りたくなったら、この1台。ピアジオ新設計の250ccを搭載してくれれば…と考えるのはマガママか?


○ Malaguti

phantom MAX250
ボリューム感があるボディのわりには軽快。いまや多くのモデルが150kgを越えた250ccクラスでは、極めて軽量な138kg。ハンドリング・エンジンパワー・車格のベストバランス。普通に乗れるが、ファントムという車名とマットブラックのボディでは、乗り手が本気になってしまうTMAXスモール版。やはり、ピアジオ新開発の250ccを搭載。


○ Piaggio

Beverly500
排気量がもたらす余裕の加速と、ラージホイールのスタビリティ。イタリアの舗装事情が生ませたハンドリング。石畳には必須のホイール径?。Scarabeo500は大きいし、普通っぽさが無いからちょっとね、という方にお勧め。よく考えてみると、この車両も国産と比べれば、普通じゃありませんが。500ccのラージホイール車って、オートバイから乗り換えても違和感が少ないハンドリングと動力性能が魅力と感じたのは、Scarabeo500と同様。

Beverly250
不足を感じない動力性能。500より軽快で、スタビリティも兼ね備える。同じBeverlyというモデル名を冠した500と比べると、兄弟車という印象は薄いのが、apriliaのScarabeoとの違い。よく走るじゃないかと思ったら、この車両もピアジオ新開発の250ccを搭載。Scarabeo250と比べるなら、デザインの好みでこちら。やはり通勤快速に最適。


○ Vespa

実は、ベスパ初試乗なのです。スチールモノコックって剛性あるのですね。国産250ccスクーターよりも剛性感があります。前後片持ちサスでしたが、コーナー左右の違いは感じないし、特に動きが良いフロントの剛柔併せ持った特性がたまりません。特にブレーキング時にそれを感じ、安心して前輪に荷重を移動できます。
それとスチールモノコックは、樹脂パネルを覆った他のモデルとは違って、塗装の仕上がりがいいです。クルマと同じ質感です。

LX125
スクーターらしいキャラクターだが、国産よりもスタビリティはずっと上。スタビリティをGT系と比べてしまうとちょっと…。でもGTの大きさが気になる人にはLXがお勧め。

GT125L / GT200L
余裕のある足回り。125ccモデルから選ぶなら、これ。LXと比べるとボディの大きさを感じるものの、その分スタビリティは1クラス上。200は余裕の足回りに、トルクが増えたエンジンが頼もしい。質感のあるメーターなど高品位さに好感度大。GTは大人が乗るスクーター。


【まとめ】

唐突感が小さい発進で、低速でも速度調整がし易く、スロットルに対してリニアに速度が上昇していくCVT。国産車より音は大きいもののトルクフルで高回転まで回るエンジン。安心して掛けられるブレーキと、スタビリティ溢れるシャーシは健在でした。イタルジェット試乗時と同様に、特にCVTのセッティングが国産車と異なるのが印象に残りました。仕組みは電子制御を採用したものを除けば皆同じで、改めて確認すると至って単純なメカ式ですが、奥が深そうです。
国産車は発進加速(特に0-5m)を優先するため、少しエンジン回転を上げてから遠心クラッチを早く接続し、エンジン回転はさほど上げずに、常用速度域にもっていく志向です。それに対してイタリア車は、クラッチを穏やかに繋ぐので発進加速は国産よりも遅めですが、エンジン回転を比較的高めに保ち、車速がリニアに伸びていきます。このリニアリティこそ、ドライブフィールの向上に繋がっていると思います。

やはり、スクーターもイタリア製が1番です。(笑)
さて皆さんなら、何から試乗しますか?



moped 2005年 12月

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