MV Agusuta F4


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数年前のこと。
とある店で、MVのF4にまたがった。

中古である。店のデモ車で、サーキット走行を含め、かなり使い込んであった。オドメータは、1万km前後だったかと思う。

使い込んだMVは珍しい。大概は、大事に過保護に扱われており、その本性を試す程、使い込まれた機体に会うことはまずない。

またがって、前後に揺すってみる。足周りがソフトなのに驚いた。なにせ良く動く。リバウンドも確保されている。バネレートはきつくない。ダンパーも、絞め込むような過激さは無かった。

国産レプリカの過激さ加減に比べ、それは、十分に「公道用」を意識させた。聞くと、特にセッティングは行っておらず、ノーマル・デフォルトのままだという。

前後に揺すって重心位置を確かめる。これまた国産のように、とにかく前に寄せよう、というような徴候は無かった。

ただ過激さを突き詰めた機体、ではない。最新の技術と往年のブランドを使い、美しくまとめられた、カジバの高性能公道車?。

何だろうか、これは。

興味は湧いたのだが、試乗の機会はついに逃し、暫く経ってしまった。


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MVに乗ってみよう。次にそう思った時には、既に型代わりし、1000ccになっていた。
試乗車は、まっさらの新車だった。オドメータは、300km。

足周りは超・硬い。またがって前後に揺すったくらいでは、びくともしない。
大体、シートが高くて足が着かない。(ドカやMVの最近の新車は、大概こうだ。)

高価な機体である。

「車両保険はありませんので、もしもの場合は、実費を頂きます。」そんな注意をヘルメット越しに聞いていると、何と、雨が降って来た。お祈りくらいはしておこうか。十字を切って走り出すと、果たして雨は本降りになった。

いやーん(泣)
もう、機体の評価どころではない。折角の機会だからと走らせ続けるが、とにかく無事に帰ることに全神経を集中する。

エンジンは、まだ当たりがついていないし、新車なので全開は避けたから、入り口だけしか評価していないが、唐突な所はなく、扱いにくくはなかった。車体は、前後に短いこともあって、相対的に高く感じる。車体の剛性は、素晴らしく高いわけではなさそうだが、高荷重時に問題が出る程ではなかろう当然。フロント周りの剛性は試せなかった。(この状況でフルブレーキングなんて!。)

重心は、車体の真ん中寄りにある。コーナーではバンク角を稼ぎ、前後に均等にスラストをかけつつ、荷重の調整幅を高いシート高で得ながら、有事への自由度も確保する狙いと見えなくもない。しかしそれなら、見方を変えれば、気の抜けた国産ハイパースポーツ?。

腐っても四発である。マスの広がりは大きく、股下にブワッと広がる質量を感じる。(絶対質量の大きさだけではなく「広がり」が大きい。)やはり不快だ。もう一つ、エンジンから昇って来る熱気はかなりのものだった。この辺りの感触は、ただの水冷ヨンパツの平均値だ。マンマシンインターフェイスは、BMWあたりを良く見習ってほしい所である。

とまあこんな所。後はもう、そーっとそーーっと帰り着く、ことに集中する。


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ショップにて


当初期待していた、公道バイクとしての片鱗は、このコンディションでは、伺い知ることができなかった。

カジバMVは高価である。ブランドイメージも高い。それだけに、実際にその走りを評価して、それを目的に購入して、日々の走りに活かしているという例は、どれほどあるのか疑問だ。巷の雑誌の評価も、その本質を突くような、鋭い物にはお目にかかったことが無い。

だれか、こいつの本当の姿を知らないか。

タンブリーニの意図って何なんだ。
もう一回乗らないとダメかなあ・・・。

(実は、最初にまたがった750の、サスがへたってただけ、だったりして・・・)



ombra 2005年 12月

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