今までに乗ったMOTO GUZZI

V65 Lario について

###

    在りし日のボクと妻。
 (すいません嘘です)

店に委託で出ていたものを、中古で買った。

断言するが、乗っている時の感覚だけで言うと、これは私が乗った中で、最高のバイクだった。

エンジンは、大型V車ほどの押し出しはないが、必要十分のちょっと上くらいのパワーを、ブイブイと出してくれる。元気一杯な回り方も大変よろしい。

車体はユルくて限界は高くないが、小さく軽く扱い易く、どんな峠でもスイスイ走れる。前後16inchも効いていて、思ったより小回りする(旋回効率が高い)。スライド特性も良好、雨の日はミズスマシだ。

高速巡航もいい。中央車線が流れてるペースくらいなら楽勝だ。タンクが小さいので給油は増えるが、足を延ばすのには吝かではない。

どこでも、どんな状況でも、気後れせずに楽しめる。ルマン1000から乗り替えると、もう、目の前が、ぱっと開けた感じ。

「自由だああー」(笑。その分、天井は低いのだが。)

もう、単純に走るのが楽しくて、毎週のようにあちこちを走り回った。
学生の頃に戻ったような、久しぶりの感覚だった。


###



いっぱしのオジサンなら、走れる時間がそうそう取れる訳でもないだろう。だから、その時にすぐ「走ろう」と思える気軽さは、実に有り難い。

しかし往々にして、気軽さと楽しみは両立するものではない。むしろアンビバレンスと言える。

気軽なバイクは、軽くて小さい。パワーもないし限界も低い。結局、ガマンを強いられる。だからパワーを上げて強化する。新型は次第に巨大化する。大きく強くなった分、車体は重くて手に余る。もはや、気軽ではなくなってしまう。

「あれ?何が良かったんだっけ?」

一長一短あれど、良くならない。
理想を中心にした、球の上を滑っているような。
巷はそんな例にあふれている。

ラリオは違った。
気楽さと楽しさの、微妙な了解点を射抜いた、貴重な例だった。

「気楽さ」が「やることがない」ことを意味しない。やれることはどこまでもあって、どうすればいいかの情報もくれるし、やればやるだけ、フィードバックがある。気楽なくせに、操っている楽しみと実感は、いつもある。すぐに乗り出せて、いざとなれば足も延ばせて、クルクル乗り回せて、峠も楽しい。気軽さが楽しさをスポイルすることなく、むしろ両立している。

それは、公道ライダーが楽しむ道具として、大変に優れた解答例だった。


###

でも、結局、手放した。

GUZZI のVツインは、小中排気量車も丈夫だが、大型Vツインの頑丈さの感覚には、ちょっと及ばないと思う。

私の手に入れた個体は、既にかなり走り込んでいたこともあって、維持は簡単ではなかった。ルマン1000と同等か、それ以上かかっていた。悩んではいたのだが、欲しいと言ってくれる人が現れたその時に、ギブアップしてしまったのだ。

ラリオをきれいに維持している方も、現にいらっしゃる。私の情熱が足りなかったのかもしれない。(稼ぎも・・。)

しかしもし、今、新車で乗れるなら、是非とも手を出したい逸品であった。(探せばありそうだが・・。)


###

もし今、ラリオに手を出そう、という人が居たら、二つだけ忠告しておきたい。

メンテナンスは、ラリオの販売当時から実績を持っている、信頼の置けるメカニック(店というより人・経験)を選びなさい。

クラッチは重いので、左手は鍛えておこう。強化クラッチなのだ。
人間を強化してしまうという。(笑)



ombra 2005年 12月

→ サイトのTOPに戻る

© 2005 Public Road Motorcycle Laboratory