私は必ず相手を確認してからでないとドアを開けないタイプである。社名でなく名字を名乗るような人にも「何でしょうか?」と要件を確認する。しっかりしているようだが、実は開けたら最後、相手の話をふんふん言いながら聞いてしまうし、新聞などのあたりさわりないものなら、つい契約してしまう。我が家は長年読売新聞に親しんでおり、たった3カ月でも変わってしまうと困るのだ。子供はテレビ欄が見にくくなったと文句を言うし、オットはチラシの数が減ったとブツブツ・・・。ビール券につられる自分を戒めることも何回か。
この日のセールスは「・・・で〜す!」と威勢良く、私はすっかり宅配便と勘違いして開けてしまった。現れたのは背広姿のオニイサン。「シマッタ!」と思ってももう遅い。相手はぺらぺらとしゃべり始めた。どうやら新しく出来る宅配専門のクリーニング屋であるということなのだが・・・。
「只今、オープニングキャンペーン中でお布団のクリーニング1枚5000円のところ2000円のサービス券を差し上げています」
セールスマン氏の話によると、もともとが布団屋なのでしっかり中綿を取り出して洗うからダニや汚れもスッキリ、なのだという。この手の悪徳商法はイヤというほど見聞きしているが、どうもそれとは別口なようだ。「今なら無料で」とか「1枚たったの300円で」なんていかにもうさんくさそうな感じはない。
一時、本気でクリーニングを考えて調べたりしていたのだが、有名なクリーニング店でもだいたい1枚3000円から。サービス価格2000円は妥当かも。仙台の駅前にある会社まで持っていって徹底的に洗うという。う〜む。
「この後、別の者がサービス券をお配りしています。お宅は何枚必要でしょうか? お布団の種類は何ですか?」
大人用に羊毛2枚と、子供用には綿を1枚、と言うと、セールスマン氏はいよいよ、という感じでこう言った。
「綿の場合、安い合成のものもあるのですが、それだと洗ったときに型くずれしたり縮んだりすることがあるのです。今、確認のためにお布団にさわらせていただけませんか?」
え〜〜っ! ナニ、この人? ヒトの家にあがりこんで、布団にさわるなんて神経、どうなってるの? 私の中で警鐘がガンガンと鳴り響く。
「今、すぐにっていうのは困りますっ!! それに、たぶんウチの綿布団は安〜い合成の綿でしたからっ!」
すると、私の警戒を感じたかのようにセールスマン氏は話をそそくさとまとめて帰っていったのだ。
「それでは、後からチラシの方はポストにでも入れておきますので・・・」
何だ、ナンだ、何だったのだ〜今のは?
仕事に戻ってからも、嫌な感じは消えない。思いあまって同じ団地に住む友人に電話してみる。「ねえ、変なセールス来なかった?」「来たよ。何かコワイ感じの人だった」「布団にさわらせてくれとか、言わなかった?」「そこまでは言ってなかったけど・・・」ウチでのいきさつを話すと「ヤマモトさんちで怪しまれたから、急遽その話はやめたのかもね〜」
夜、オットにこの話をすると「そう言って新しい布団を売りつけるのがいるって、この前ラジオで言ってたぞ」という返事。そういえば「もともと布団屋」って言ってたっけ。ラジオも岩手県のローカルな放送局なので、もしや同じ業者だったのかもしれない。
普通、セールスに歩くなら一緒にチラシも配るはずだし、確認した数しかサービス券を出さない、っていうのも妙だ。最初っから、布団クリーニングなんて口実じゃなかったのだろうか。チラリと見せたフリーダイヤルの載ったチラシも、なぜかファイリングしてあって、そこから取り出して置いていく様子もなかった。
とにかく、セ〜〜フ! 皆さんも、気をつけて!