5. それから
たぶん日曜日の夜、カー君は逝ったのだろう。
死を知ってから2日経って、私もだいぶ落ち着いた。今までカー君を撮りためた写真を集めてアルバムも作ったし、写真立てにお気に入りの写真も飾った。
「ここにカー君がいたことを忘れないようにね」
次男がプラケースに写真を貼り付け、最初はそれを見るたび涙ぐみ、夫がたまりかねて剥がすように言ったり、写真が見えないように位置を変えたりしたのだが、もうそれも大丈夫。朝、ケースの写真に「オハヨウ」と言えるようになった。
リビングにあるエサやオヤツ、「カービィちゃん」と書かれた病院の薬袋など、片付けなくてはと思うのだけど、忙しいのを理由に手をつけられないでいる。
鳥好きの私にとって、ハムスターは単なるネズミのはずだった。
しかしいつの間にか、子供と一緒にかかわるうちに存在が大きくなってしまっていたようだ。子供にかこつけてショップでエサを選んだり、給水器の具合が悪いと、可愛らしい専用水入れをふんぱつしたり。
これだから、困るんだよなぁ〜、いつもいつも、子供そっちのけではまるし、仕切るし・・・。
「オカーサンが泣くから、もう飼っちゃダメ」
1か月後に迫った誕生日のプレゼントに新しいハムスターのお迎えを願う次男に、夫が話しているのが聞こえてくる。そう、しばらくは新しい子なんて考えずに、カー君への想いを鳥達に向けるべきかなぁ、とも思う。
でも、もう知ってしまったあのふわふわの体、幸せこの上ないといった無防備な寝顔を忘れることは出来ないのだろう。
子供に甘い親は、きっと新しい仲間を迎えることになるだろう。
だけど、小さな命のほんの一瞬のきらめきを、私達は絶対に忘れない。