卯的生活・緊急短期(であってほしい)連載

ぺーどら日記〜修行編〜

 

2001.5.の出来事 ぶつけちゃったぁ〜! 


はずかしながら、タイトルそのままの内容である。

この前、初めて車をぶつけた。左後方、ちょうど車の角の部分。後部ランプのカバーにビシッとヒビがいった。そしてその上下がポコンとへこみ、塗料がハゲた。

その日は次男のスイミングの帰りだった。今までより1時間遅いクラスになり、通い慣れたいつもの道も、夕方ということもあってか車の数が多少増えていた。車2台がすれ違えるかな、という細い道に左折で入ったときに、事件は起きた。対向車に大きなワゴンタイプの車がデンと現れたのだ。

運転している女性は「アンタ何で入ってきたのよ! 邪魔なのよ、ジャマ!」というような顔つきだ。私は軽の中でも一番小さなタイプで小回りだけが自慢のような車、もしかしてそのまま通れるのでは?と思ったのだが、相手の無言の訴えに車をバックさせることにした。

初めはソロリ、ソロリと。しかしまだ相手が動き出さないので、再び後退、と、そのとき「ペキッ」という妙に乾いた音がして車体に衝撃が走った。うわ、やっちゃった!というのがそのときの心境だった。

あわてて後方を確認すると、ぶつかったのは電信柱である。「うわ〜」と私がショックを受けている間に、対向車はゆうゆうと通過していった。ま、まあね、ぶつけたのは私であって、その車には何の縁もゆかりもない事態でしょうよ。だけどね〜〜、あーあ。

電信柱は無事なようだったが、我が愛車びび君はすっかり痛手を負ってしまった。とにかくものすごいショック。やっとの思いで家まで帰り着き、車体を確認した。乗っていた次男も一緒になって「あ〜あ〜、まぼちゃん号が」といっちょまえにのぞき込んでいる。まぼちゃんというのは、次男の幼名で、彼の送り迎えを目的として購入した車だったので、二人でこっそりそう命名していた。

フラフラと家に入ると、まずオットに電話をかけた。開口一番「ぶつけちゃった〜」と言ったら「誰に?」という冷静な返事。まったく、「大丈夫?」とか「ケガはないのか〜?」とか、そういう言葉は出ないものか。

かくかくしかじか、と状況を説明すると、いますぐどうこうということではないと悟ったらしく、単なる結果報告で電話は終わった。しかし、私の心は重たい。別に誰に迷惑をかけたわけでもないのだけれど、車にはしっかりと傷が付いているのだった。それは物理的な傷が格好悪くて嫌だ、というのではなくて、我が身の分身のような愛車、ヒヤリとする運転や道を間違えたときにウロウロした心細さなどを、一緒になって走り抜けてきた車に申し訳ないことをしてしまったという想いだった。

まだ日のあるうちに帰宅したオットは駐車場で車の傷を確認して家に入ってきた。「カバーのヒビから水が入るかもしれないなぁ。それから、剥げたところはそのままだと錆びるかもしれないから、明日スバルに持っていって聞いてきた方がいいよ」

もう、何かあったら即スバル、というのがカタチになってしまっている。翌日連絡してみることにしながらも、まだ落ち込んでいる私。「ま、これもいい経験だ!」オットの言葉に、どうにか素直にそう思うことにした。どんなに悔やんでも、起きてしまったことなのだ。

翌朝、「クルマぶつけちゃったんですぅ〜」という電話に担当氏は「ええっ!」とものすごく深刻そうに驚いてくれた。そしてとにかく車を見てから、ということになった。実際に傷を見た担当氏、「・・・どんなにすごいかと思っちゃいました〜」気が抜けたというか、こんなもんだったの?というような安堵の言葉。そしてやおら事務所に駆け込むと、大きなプラスチックのボトルを持って戻ってきた。そしてランプの上部の車体がへこんだ部分をボトルからタオルに移したクリーム状の液体で拭き始めた。

「これだと、だいたいの浅い傷は消せるんです」ちょこっとしたへこみはあるが、擦過傷のごとき傷はみるみる消えてしまった。それだけで気分が明るくなってきた私は、その魔法のようなクリームでボンネットに冬の間に付いてしまったシャッと引っ掻かれたような傷までついでに消してもらってしまった。

カバー下部の車体の剥げた部分は鉄板ではなくプラスチックのようなものなので、錆びることはないそうで、そこも担当氏が持ってきた車体と同色のペイントセットのようなものでペタペタと色塗りしてくれた。

そしてバキッとヒビのいったランプのカバーは、幸いにも部品があるということで、これも担当氏がパカッとはめ替えてくれた。

「工場でやったんじゃなくて、私が出来る範囲でしたから、工賃はナシですよぉ」

担当氏はそう言ってニッと笑った。本当に今までの不安や後悔をいっぺんで吹き飛ばすような笑顔だった。親切な処置のおかげで、びび君は5000円もかからずに治療された。へこんだ部分は気にするほどではないし、これからの教訓にしようと都合良く考えてそのままである。しかし私の心の傷は、もうすっかり痛みがやわらいできていた。

数日後、「この前初めてぶつけちゃってさぁ」と友人に会うたびごとに話していたら、意外にも「私もやったよぉ!」という答えがあちこちから返ってきて驚いた。スライドドアをポールにぶつけてへこませて6万かかったとか、フロントグラスに小石が飛んできてヒビが入り、修理に8万かかる予定だとか・・・。

みんな、口を揃えて「5000円で済んで良かったじゃない〜」とか「やっぱり最初はすごくショックだよね」とウンウンうなずきながら話を聞いてくれ、「あぶないかな、と思ったときは自分から動かないで待ってるといいよ」というアドバイスもしてもらった。何だか思いやりの気持ちが伝わってくるようで、とても嬉しかった。

びび君との思い出をまたひとつ増やした今回の出来事。しかし、くれぐれも安全運転、安全運転〜!