卯的生活・緊急短期(であってほしい)連載

ぺーどら日記〜修行編〜

 

2001.4.の出来事 タイヤ物語-事件編- 


この冬の総決算とも言える事件が起きた。
「この冬」なんて言っても全国的にはすっかり春。しかし盛岡を初めとする東北地方、北海道などでは、ついこの前まで、春先のドカ雪を警戒しつつ、スタッドレスからノーマルへのタイヤ交換の時期をうかがう日々であった。

そんな4月のある土曜日。もういい加減大丈夫なんじゃないか、ということで我が家は家族総出でタイヤ交換を決行した。頼りになる小学生の息子に教えられながら、今回は私も2本分のタイヤを自分で交換してみた。

やっぱり、実際やってみると覚えるモノだ。もう、ジャッキのありかも工具の場所もしっかりアタマにインプットされた(そんな場所よりも肝心の交換方法はダイジョウブか〜?)。

一仕事終えてオットが「スタンドに行ったときにでも、空気圧見てもらった方がいいよ。空気圧はタダだから〜(笑)。車軸バランスも見ましょうか、って言われたら、前だけ見てもらえば十分だからね。こっちは1本千円くらいかな」

おおー、空気圧と車軸バランスね。スタンドはオットの会社も使っているところが安心出来ると思って、初めての給油からずっとそこでお世話になっていた。そろそろガソリンも残りわずか。ちょうどいいから、そのときにでも見てもらおう、とかる〜い気持ちでいた。

しかし。数日後、ガソリンを入れ、空気圧チェックをお願いしてハナ歌混じりだった私はスタンドの店員さんの言葉に愕然とした。

「このタイヤ、もうダメですね。かなり傷んでますよ。ヒビの入ったゴムホースみたいなもんだ」

え? 我が耳を疑う私。店員さんと一緒になってかがみ込み、指さされたタイヤをのぞき込む。言われてみれば、タイヤの外側の溝にそってピキピキという細かな亀裂が無数に走っているではないか。

「これじゃ、ただ道路にタイヤを置いてある、ってだけですね。雨の日とか滑りますよ。ここら辺あたりの住宅街の細い入り組んだ道なんかで、とっさに急ブレーキなんてときに滑ったりして、危険です! もう、今すぐにでも取り替えた方がイイです!」

ええ〜〜っ。雪道の心配が終わったと思ったら、今度は雨? それどころか、普通に走るのでさえ危険だと言うのである。

「コレ、夏に買ったばかりなんですよ、中古だけど・・・」

私の走るのなんかたかが知れてるし、途中スタッドレスに履き替えたことも含めて考えると、3〜4か月しか走っていないことになる。買うとき、タイヤの状態なんて確認しなかったのも悪いのだろうけど、こんなにも早く交換しなければダメなモノを売りつけられたのか・・・!

二重のショックに襲われながら、店員さんの話を聞く私。タイヤは4本交換してだいたい2万円以内になること、カードも取り扱っているから、今現金が無くても大丈夫であることなどを、店員は私に真剣な顔で話し続けた。

不幸にも、というか、そのときの私はカードさえ持っていなかったので、とりあえずまた来るということにして、とにかく家に戻った。そしてケータイでオットに今聞いてきたことの一部始終を報告したのだった。

「ホントかなぁ」
意外なオットの答えにキョトンとする私。

「あそこ、結構商売熱心だから、とにかく色々言ってくるんだよね。タイヤが古いって言っても、この前交換したときには特に気がつかなかったなぁ。取り替えるにしても、絶対に今すぐでなきゃ!って問題ではないと思うよ」

それにスタンドはやはり高いから、他の店を見て回ってから決めても遅くない、と彼は言うのだった。そうか、いますぐどうこうなるワケではないのか。ちょっと落ち着いてケータイを切った。しかし、もうひとつの心のわだかまり、あんなに良心的で気に入っていた中古車会社が、平気でそんなクルマを売っていたのかと思うと、私の心は不信感でいっぱいになってしまった。

それに、今回のようなケースというのはどうなるのだろうか。「それはアナタのチェックミスです!」と言われてしまうのがオチかも知れないが、私はあの善良そうなセールスマン氏にどうしても話を聞きたくて、再び電話を握っていた。あいにくこの日は休みだそうで、翌日連絡をもらうことになった。


タイヤ物語-解決編-

不安な気持ちでどうにか一日を過ごした。どうも気になることがあると、徹底的に考え抜いてしまう性格である。夜、ベテランドライバーの友人に電話をかけ、ことの顛末を聞いてもらった。

我がオット、車はいつも営業車でメンテナンスも全て会社がやってくれるという待遇(実はその分、給料が寂しいというウワサ)なため、車の税金とか保険、部品の交換なんて話にはうとくてあまり頼りにならない。

友人はやはりぺーどらから一念発起した人で、当時からの愛車を去年買い換えたばかり。車検2回目で乗りつぶす営業車とは違ってかなりな経験があるに違いない。

「タイヤも保管場所によるからねー。私も1回交換したことあるよ。オートバックスとかのお店の方が、スタンドより安かったりするから値段調べてみた方がいいね」

そして、タイヤの減り具合を確認する方法も教えてくれた。

「タイヤの中心あたりに矢印があってね、そこをたどっていくとタイヤの溝の中にちょこっと出っ張った部分があるの。そこが出て来ちゃうともう交換時期、ってこと」

ふんふんと聞いて翌朝タイヤを見てみたが、矢印はあってもどれが「出っ張った部分」なのか全くわからない。オットもしかり。

そうこうしているうちに、スバルの担当者から電話が入った。

「はっきり言って、お渡しするとき車検は通りましたが、タイヤの状態がどうだったかまでは私も確認していませんでした。それで、新品ではありませんが、あと1年や2年は全く問題なく走れるタイヤと交換させていただきますので・・・」

意外にも無条件でタイヤを交換してくれると言う彼の言葉に、思わず声がうわずってしまった。昨日の友人との話でも、車を買うとき、タイヤの状態だとかバッテリーとかまでは、なかなか気が回らないよね、としゃべっていたのだ。誠意ある担当者の姿勢が本当に嬉しく、きちんとしたメーカーで買うということがどれだけ心強いかということを実感した。

数日後、新しいタイヤを履いた愛車を前に、担当氏に例の「出っ張り」を教えてもらった。矢印の指す方向の溝に指を入れると、一部分だけ少し盛り上がったような箇所がある。タイヤが減ってくると、その盛り上がりが顔を出す、という仕組みなのだそうだ。

これで車検までは安心して乗り回せることだろう。それにしても、一時はかなりの出費を覚悟していたのであるが、その心配も無くなった。本当に心からホッとしたゲンキンな私であった。