王様の耳はロバの耳



 山の麓に建つ祠堂学院高等学校の学生寮、二階のその部屋は、ひそやかに「野沢政貴診療所」と呼ばれている。

『秘密厳守いたします。相談事なら当診療所へ。診察時間は夜十時まで』

 どこぞの怪しいキャッチフレーズさながらに、二階の住人たちの間では広く伝えられ、野沢政貴の住まう二階ゼロ番は精神安定所として隠れた人気がある。

 他人の相談事の重要度というものは、自分の価値で判断してはいけない。
何よりも相談者本人の価値観が絶対であり、聞き手の価値観は重要視されない。
ただし、世間一般常識の基準にのっとった第三者的立場での判断を求められた場合に限り、例外として両者暗黙の了解のもと、混乱状態の本人になりかわり、聞き手が判断を下すことが許される。

 相談事は個人によりけり多種多様で、その対応も人によって十人十色である。
自分で解決困難なために助言を求めようとする者、自分の中で消化されずに燻って誰かに話に聞いてもらいたいだけの者、すべて投げ出し責任転嫁してくる者。

 誰にも話せない。話してはいけない。
その思い込みがまた蓄積を増徴させ、奥深い内容になればなるほど内なる心にずしりと積り、重く底深く精神の深淵に沈ませる。

 その蓄積が許容範囲内のうちはまだ救われる。だが、人には誰しも限界というものがある。

 ゆえに、容量オーバーとなった時、もしくは、そうなりかけると自己防衛が働いて、硬い施錠も緩んで外れ、人は秘密を外部に吐き出したくなる。

「野沢を信用して話すんだ。頼むから誰にも話さないでくれよ」
「わかってるよ。今日聞いたことは他言しないと誓うから。それだけは信用してくれて大丈夫だよ」

 しん、と静まり返った二階ゼロ番で秘めやかな会話が交わされる場合、もれなく野沢政貴の朗らかな仏のような微笑みがついてくる。
その笑みがどれほど悩める子羊たちの救いになっているか、当の政貴はわかっているのかいないのか。

「実はさ。俺、見ちゃったんだよ」
「ふうん」

「……何を、とは聞かないのか?」
「俺は基本的に聞くだけだからね。こっちからきみの秘密を探るようなことはしないよ。
その代わりって言うわけじゃないけど、相談事を解決してもらおうとは思わないでくれよね。
きみが話してそれで気持ちが楽になるなら、こちらとしては話を聞くと言ってるんだ。
だから、話す内容も話す範囲もすべてきみが決めてほしい。きみの判断に任せるよ」

 階段長は生徒の相談役であるが、万能の神ではないのだ。全面解決を求めようとしてはいけない。
階段長はあくまで聞き手である。

「わかったよ。それでもいいから聞いてくれ。実はさ……」

 今宵もひとりの生徒の悩みが吐き出され、野沢政貴の両耳は彼の心の葛藤をひとつも漏らさず拾ってゆく。

 こうして、秘密の夜は、幾重にも繰り返されて。

 ゆるゆると更けてゆく夜に煌々と輝く二階ゼロ番の明かりが消える頃、またひとつ、政貴の中に更なる蓄積が増えるのだった──。





【とある夜。生徒Aの場合】


「ずっと前のことなんだけど」

 そう切り出した生徒Aは、野沢政貴と同じ三年生だった。

「自分の目でも信じられなかった。だってあの赤池だぜ?
当時はまだヒラとはいえ風紀委員で、それもあの柴田先輩が次の風紀委員長にって目をつけてたくらいの有望株で、これから祠堂の風紀委員会を背負って立つって時だったんだぜ?
その赤池が喫煙だなんて。俺、こんな話、今まで誰にも言えなかったよ」

 すでに前期風紀委員長を退いたとはいえ、昨年度の後期に続き、今年度の風紀委員会まとめ役の任を十二分に果たした赤池章三は、規律厳守を背中に掲げたような人となりをしている。
同じ年の春、入学して以来の顔見知りとなれば、生徒Aが彼の評判や人間性を知っていても当然だった。
誰かにチクッて、それが章三の耳に入るようなことになれば、逆にこちらの痛いところを突かれそうで怖いのだ。
そう、生徒Aが語るのも無理はない。

 十代半ば過ぎというものは、何分、好奇心旺盛な年頃である。
無謀な挑戦は時に経験を養い、自我意識を育ててくれる──とはいえ、友人、知り合いを通しての誘惑には、欲望と理性のバランスを問われる機会も多々あるのだろう。
まさに寮生活は、小さな社会と言っていい。

 規則はすべての者が守るためにあり、一部の者が破るために存在する。
事実、全校生徒を見渡しても、「あなたは校則違反、または寮則違犯をしたことがありますか?」の問いに、「まったく身に覚えはありません」と胸を張って言い切れるだけの聖人たる生徒が本当に実在するのかすらとても怪しい。
仮に存在したとしても、そのような者はまさに稀有なる人材だろう。

 それが二階階段長、野沢政貴の客観的見解だった。

 そして、当の生徒Aは、その稀少な聖人になりえなかった。
どうやら同じ脛に傷を持つ身としては、痛い腹を探られたくないらしい。

「そっか、あの赤池くんがねえ。でも今は彼、吸ってないんだろ?
もし仮に校則違反で訴えるとしても、そういうのは物的証拠とかいるから……。
まあ、一番いいのは現場に乗り込む方法だけど。
どっちにしろ、一年以上も前の話じゃどうにもならないんじゃないのかな。
それに、よく言うじゃない。二十歳になったら禁煙って。
赤池くんがそれより早くやめられたのなら、それはそれで彼にとってはよかったのかもしれないよ。
きみが誰にも言わなかったのは正解だったんだよ。だって、もしも喫煙の話が噂になってみなよ。
せっかく赤池くんがタバコから遠ざかろうって努力している時にタバコの話題を提供するってことはさ、彼に喫煙の楽しさを思い出させちゃっうとこだったかもしれないんだよ?
一度タバコに嵌ると、禁煙するのは難しいらしいからね。
でも、これで彼の健康状態も期待できるってもんだし。よかったよかった。
で? きみはその時の物的証拠品とか持ってるの?」

「あ、いや、そんなものは特には……」
「そうだよねえ。持ってたら、きみが吸ってると思われかねないもんね。
ヘタな疑惑、招かないですんで、逆に助かったじゃないか」

「……そういうもんか?」
「何事も考えようだからね。そうそう、きみ、タバコの火のつけ方って知ってる?」

「は? そんなの口にくわえてつけりゃいいだけだろ?」
「へえ、そっか、そういうなんだ……。あれってお線香みたいには点かないのか。
口にくわえないと駄目なんて、僕は今まで知らなかったよ。
やっぱり経験して初めて知るってことって結構多いんだねえ」





【とある夜。生徒Bの場合】


「とにかく聞いてくれ、野沢。これは俺の胸の中だけに納めておくにはキツすぎるんだ」
「そんなに大変な話なのかい?」

 困ってるんだと口では言いながらも、にやにやにやけてる生徒Bには、困惑の雰囲気など微塵たりとも見受けられなかった。

「それがだな。あれは桜が終わって、しばらく経ってからの頃だった。
ちょっくら夜のお楽しみにと思って寮の外をウロチョロしてたら、何やら悩ましげな声が聞こえるじゃねえか。
それがえらく色っぽい声でさ、ついつい好奇心が募っちゃって。
つい足が勝手にそっちに行っちゃったわけよ。そしたらさ、誰がいたと思う?
暗かったからはっきり見えたわけじゃねえけど、俺はね、誰だか何とかくわかったんだ。
意外な奴だったよ。野沢、聞いて驚くなよ、何とあの葉山なんだよ。
そんで、あまりにも意外な奴だったもんだから、一応その相手ってのが気になって確認しようとしたんだけど、全っ然、該当する奴がいねえんだよ。
葉山はひとりで寮に戻ってきてたみたいだし、葉山が帰ってきてから誰も寮に戻ってきた人間はいないしさ。
誰かと外で会ってたって話も聞かないし、まさかと思うけど、外の人間を祠堂に引き入れたってことはないだろうしな。
葉山の同室ってのあの三洲だろ? まさか、あの三洲が何も気づいてないわけねえじゃん。
同室者が部屋にいなかったらそりゃ気づくモンだろ?
ってことは、葉山の相手は三洲以上のツワモノってことになる。考えるだけで怖ぇーよ。
えらいもん見ちまったよ」
「ふうん。それで、その目でホントにその現場を見たのかい?」

「改めて確認されると困るっちゃ困るんだがよぉ。でも、『いい子いい子』って声がしてたんだぜ?
決まりじゃん」
「もう一度聞くけど、それはこの春のことなんだよね?」

「ああ。あれは確かに春だったぜ」
「そっか。それならそれは俺じゃなくて大橋先生の管轄だな」

「へ? 大橋先生? 大橋先生は生徒指導担当じゃねえぞ?」
「まあね。きみだってあの先生が園芸部顧問だって知ってるだろ?
先生、学校に許可もらって温室で猫飼ってるんだよ。
捨て猫でね、ほかの猫は貰ってくれる家が見つかったらしいんだけど、その猫だけ見つからなかったから飼うことになったんだって。
それで葉山くんが食堂のおばちゃんから餌になりそうなものを大橋先生に頼まれて温室に運んでるらしいんだよね。
猫って発情期になると変な声で鳴くっていいじゃない? 人によっては赤ん坊が泣く声に似てるとも言うし。
春になると陽気もあたたかくなって気持ちいいから、欲求不満になって外で猫がそういう声だしたくなる気持ちもわからないでもないよねえ。
でも、猫と違って人間は年中発情期らしいから、怪しい声も春とは限らず年中聞こえちゃう可能性アリかもね。
もしかしたら、今日もどこかで聞こえるかもしれないよ?
この季節、冬ほどじゃないとはいえ山の夜は冷えるから、風邪ひかないといいのにねえ。
あ、そういやきみ、よく風邪ひくよね。大丈夫? 祠堂の夜は冷えるからね、精々気をつけなよ」





【とある夜。生徒Cの場合】


 生徒Cは部屋に入ってくる時、注意深く左右を見渡した。
そして特に、隣りの部屋のドアを気にしていた。

 二階ゼロ番のドアの開閉も、音を出さないように息を止めて、とても慎重だ。
まるで忍者のようだな、と政貴は思った。 

「野沢ひとりだよな?」
「うん、ここには俺ひとりだよ」

「そうか、それで安心した。あのな、野沢にだから言うんだぞ。……俺、実は気になる奴がいるんだよ」
「あ、悪いけど、そういうのは校則違反だから、聞くわけにいかないな」

「聞かなくてもいい。俺が勝手にひとり言を言ってるってことでいいんだ。だから聞いてくれ」
「だから聞くわけにいかないって言ってるじゃないか。でも、まあ、ひとり言は俺の管轄外だからね。
ここに座ってるだけでいいのなら」

「そうしてくれ。座ってそのまま、耳を塞がないでいてくれればいい。
それで実は、その、俺が気になる奴っていうのが、だ。その……、こ、こ……」
「こ?」

「こ、駒沢なんだ……」
「え? 駒沢? もしかして二年の駒沢瑛二かい?」

 思わずふたりして、ちらりと壁を見る。
その壁の向こう側には、駒沢瑛二の部屋があった。
夜更けの時間帯である。当の本人が壁一枚隔てて、あちら側にいるかもしれないのだ。

 生徒Cが声を潜めてしまうその気持ちが、政貴にも充分察せられた。

 それにしても。

──よりにもよって駒沢か。さて、どうするか。

「気になるってそれ、まさか果し合いとかじゃないよね? 本気の好き、だったりする?」

 まさかと思うが念のため。情報収集は正確に。

「ああ。って、おい。俺のひとり言なのに、いいのか? おまえ普通に会話したりして」
「あ、そうでした。失言でした。……いいよ、続けて?」

「……去年、野沢は駒沢と同室だったろ? だから駒沢のこと、よく知ってるかと思ってさ。
今も隣りの部屋にあいつがいるかと思うと、この部屋でこんな話してるの何となく聞かれちゃいそうで恥ずかしいんだけど……」
「そっか。きみが駒沢を、ねえ。でも、それはちょっといただけないな」

「は? いただけない?」
「うん。実はね、彼にはもう相手がいるんだよ。剣道部の真行寺なんだけど。
ふたりでよくつるんでるの見たことない?」

「真行寺って、文化祭で王子役をやったあの二年か?」
「うん。駒沢ってさ、ああ見えて中身は乙女だからね」

 乙女、の部分で、生徒Cの頬がヒクッと引きつった。

「まさか、だろ?」
「いや、ホント。駒沢、夢見がちだし。王子サマに弱いんだよ」

「……まるで王子と野獣だな」
「ははは、美女がどこにもいないところがミソなんだけどね。真行寺もね、結構いい奴なんだ。
すごく駒沢思いでね。よく俺のところにも、もっと駒沢に優しくしてあげてくださいって言いに来るんだよ。
これでも俺、優しくしてるつもりなんだけどねえ」

「そっか。三年相手に申し出るくらい、真行寺の奴、駒沢のことを……」
「そういうわけだから。ほかに目を向けたほうがきみのためだよ。相手がすこし悪かったね」

 ここに来た時点で運がつきてるよ、とはさすがに政貴も言い添えなかった。





【とある夜。高林泉の場合】


「嫌になっちゃうよね。四階も三階も、ゼロ番は盛況すぎて、ぼくが行っても邪魔モノ扱い。
この高林泉サマ対する仕打ちとは思えないね」
「へえ、ギイのところはともかく、四階もだなんて。吉沢も大変だね」

「大変なのはこっちだよ! 今それどころじゃないからって言われたんだよ、このぼくがっ!!!
もう信じらんない。吉沢くせに生意気だよ!」
「そりゃまた吉沢にしては強気に出たもんだね。余程のことがあったのかな」

「知らないよ! そんなのっ! あー、イラつく。もう吉沢になんかキスさせてなんかやんない!」
「こらこら、ここでそういうことは言わないの。今の聞かなかったことにしておくからね」

「よく言うよ。笑顔でしっかり聞いといて、今更何言ってんのさ」
「ま、確かにね。それならぼくも言わせてもらうけど。
いざとなったらそんなもの、高林くんからすればいいことだもんね。
吉沢にキス禁止令を出したところで別に不都合はないんじゃないの?」

「ぼくのキスをよくもそんなもの呼ばわりしてくれたね。まったく、階段長ってこれだから嫌なんだ。
第一、問題はそこじゃないんだよ!
だいたい、吉沢って、ぼくがそばに寄っていっただけでも茹蛸みたいに真っ赤になるんだ。
こっちが待ってたっていつになってもしてこないんだから。それならぼくからするしかないじゃないか!」
「確かにねえ。どっちからしてもキスはキスだもんね。つまりは普段はきみからしてるわけか」

「その言い方、すっごく悔しいっ! これもすべて吉沢がふがいないからいけないんだ!」
「そんなにしてほしいなら、してって言えばいいのに」

「だって、あの吉沢だよ! そんなの待ってたら陽が暮れちゃうよ。それにぼくは今、したいの!
それなのにぼくの吉沢を他人が独占してるんだよ? 絶対許せないだろ!」
「まあまあ、今日のところは落ち着いて。お茶でも飲んで、ゆっくりしてってよ」

 確かにこれまでのことを振り返ってみると、泉の言葉には思いのほか、自分たちに重なるところが多々あった。

 そういえば、と政貴はふたり分の珈琲を淹れながら、改めて思う。あいつも恥ずかしがりやだったな、と。

「茹蛸、ねえ……」

 確かにアレはまさしく蛸のそれだな、と、いざキスしようと自分に顔を近づけてきた恋人のすぼめた口を思い出す。

──きっと誰しも唇を寄せてくる時はああいう顔をするのかもしれない。

 野沢政貴はひとり勝手に納得することにした。

──それでもまだ、たらこじゃないだけマシなのかな?

 ちなみに、この泉はどうだろう。
くるくると変わる表情。あどけない物言い。おのれの信念を押し通す激しい気質。
つん、とそっぽ向くさまはとても小悪魔的で、まるでチェシャ猫。
祠堂一の美少年であり、もっとも女装が似合う最上級生。
彼の我がままは何よりも優先されると聞いている。

 そんな泉が自分からキスする相手は吉沢道雄だけと豪語しているのだ。

「そういや、他人のって見たことないな」

 誰かと誰かがキスをするその瞬間。
この泉も、もれなく蛸の口になって吸い付こうとするのだろうか?

「女優」のあだ名を冠する美少年、高林泉の蛸唇……。

──覗きの趣味はないけれど、ちょっと見てみたいかも?

 まるで理科の授業さながらに観察日記をつけてみたいと、政貴は素直に思った。

──それにしても、蛸の口か……。

「今度、鏡を見てみよう」

 蛸の口と蛸の口。吸引力は抜群に違いない。

──でも、それじゃまるでスッポンだな。

 そう思って、考えさせられた。

──火であぶって離すのは蛭だったか……? 

 スッポンは一度噛み付いたら雷が鳴るまで離れないと言われている。

 どちらにしても、待っているのは、赤く腫れたたらこ唇のような気がした。

「何事もほどほどが一番かもしれないな」

 しばらくはキスするのは控えよう、とひとり静かに心に誓う野沢政貴であった。





【とある夜。駒沢瑛二の場合】


「野沢さん、野沢さん、起きてください」

 ふたりでひとつのベッドに横になる幸福。

 さりとて、恋しい人の眠りを妨げるのは忍びないが、今はそんなことは言ってられないとばかりに、駒沢瑛二は恋人の肩を激しく揺さぶった。

「んん……、何、駒沢……。俺、眠いんだけど……」
「野沢さんってば、また口に出てましたよ。俺の身にもなってください」

「んー、いいよ。ここにはどうせ駒沢だけだし。俺、もう寝るよ。おやすみ駒沢」
「ちょっと、野沢さんってば! それじゃあ俺が困りますって」

「うるさいよ、おまえもこっちにきて早く寝なさい」

 ひとつ年上の人にそんなふうに腕を絡められて、抗えるはずもない。
猛者と呼ばれつつも、実は弱者の駒沢瑛二。

「まったく……。野沢さん、お願いですから、その寝言言う癖、治してくださいよ。
俺、すごく良心が咎めます」

 瑛二は最愛の恋人の寝顔を横目に、密かに深く溜息をつくのだった──。





 王様の耳はロバの耳。

『誰にも言えない話なら、二階ゼロ番、野沢政貴へ。秘密厳守いたします』





「ん……、赤池くんはタバコ吸ったら風紀委員長になってぇ……、ギイが押し倒して発情期がきたぁ……」
「野沢さん、頼みます……。俺、命がまだ惜しいです……」



「吉沢は蛸唇でぇ……。キスはおあずけぇ……」
「野沢さん……、後生です……」





 繰り返される幾重もの夜。

 幾多の、誰も知らない秘密の話が駒沢瑛二の胸の奥底に積もり積もってゆく。





 誰にも言わない。誰にも言えない。

『秘密厳守いたします──』



                                                         おしまい


material * NOION



*** あとがき ***

最後までのお付き合い、ありがとうございました。
当サイト、moro*onの80000hits記念作品「王様の耳はロバの耳」はいかがでしたでしょうか?
ははは。実は、一番口が硬い人は駒沢くんなのでございました〜(笑)。

っていうか、彼には命がけの、背に腹は代えられない「言えない事情」があったんですね♪
そのうち、彼、神経性胃痙攣でも起こしちゃうかも?
かわいそうな駒沢くん……(笑)。

いつもご贔屓にありがとうごさいます。
では、これからも、moro*onをよろしくお願いします。

by moro



moro*on presents


この作品の著作権は、文・moroにあります。
なお、ルビー文庫「タクミくん」シリーズはごとうしのぶ先生の作品です。著作権などは角川書店様にあります。
当サイトのあらゆる内容及び画像を無断転載・転用・引用することは固く禁じます。