「うまそうじゃん」 「何だよ、邪魔すんなよ」 「これじゃあ髪が入るだろう。押さえといてやる」 ファラが頭に手を当ててきた。 「これでいい。続けろよ」 言いたいことはわかる。 確かに髪はまとめるのが料理をする際のマナーなんだろう。 だが腰にまで腕を回す必要があるのか。 「すっごくやりづらい」 「我慢しろ」 はあ、とファラが零す息が肩にかかる。 「おまえ、あったかいな」 「そりゃそうだろ」 何しろここは火のそばだ。 あったかいどころではなく暑いくらいなんだ。 料理人とはいつも熱さとの戦いなんだよ。 その上、こう圧迫されたらムンムン状態なるのは当然だろう? くそっ、汗が出てきた。 もう我慢できない。 「いい加減離れろって」 「非情なんだな。冷たいのはリビングだけで充分だ」 「は? リビング?」 ……なるほど、そういうことか。 「寒いなら寒いって言えよ。エアコンの温度上げてやるから」 「使徒星の住人たち」シリーズ moro*on presents
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