長い間暮らした施設を出て、地域で生活している皆さんの生活の様子をシリーズでご紹介いたします。
 トップバッターは、重度の身体障害をお持ちのAさんです。
 皆さんが聞きたいと思う いろいろな質問に答えてもらいました。

Q1:自己紹介をお願いします
 2:なぜ、地域で暮らそうと思ったのですか?
 3:今、どんなところに住んでいるんですか?
 4:バリアフリーの住宅ですか?
 5:家具や家電はどんな物をそろえましたか?
 6:ヘルパーさんはどれだけ利用できるのですか?
 7:生活費は大丈夫ですか?
 8:困ったことはありましたか?
 9:施設と違ってよかったところはどんなところですか?
 10:最後に地域移行を考えている皆さんにメッセージを!

 

Q:

A:

自己紹介をお願いします

年齢は現在、50代半ばです。
脳性まひの重度障害者で、身障手帳は1級、障害程度区分6。移動は車椅子を利用しています。
父親は幼い時に亡くなり、市内に高齢の母親が一人で住んでいます。
11歳で肢体不自由児の入所施設に入り、15歳で静岡県にある病院に入院しました。
その後、28歳で障害者の施設に入所。30歳で二つ目の施設に移り、25年間そこで生活しました。
そして平成22年2月、それまで暮らした施設を出て、一人暮らしを始めました。

 

Q:

A:

なぜ、地域で暮らそうと思ったのですか?

施設を出て地域で暮らしていくことは、長年の夢でした。
でも、それは不可能なことだと思い続けて来ました。
3年前に、自立生活セミナーの案内が届き、興味があったので参加してみました。
実際に地域で暮らしている人たちとの交流会を経て、3日間の地域生活体験をすることができました。
施設と違って自由があっていいと思う反面、自分から指示をしないとヘルパーが何も介助してくれないので、戸惑うこともありましたが、自分でもできるんじゃないかなという思いが強くなり、自分の年を考えると最後のチャンスなので後悔したくないということもあって、地域移行を決めました。

 

Q:

A:

今、どんなところに住んでいるんですか?

今、住んでいる所は、右のような間取りのワンルームマンションです。
写真は、お部屋でパソコンをしているところです。私はうつ伏せで口にくわえたスティックを操作して、パソコンや電話、テレビなどを使うので、普段から床にカーペットを敷いて生活しています。寝る時もベッドではなく、布団で寝ています。
自分の一番暮らしやすい方法で生活することが大切だと思います。

 

Q:

A:

バリアフリーの住宅ですか?

残念ながらバリアフリー住宅ではありません。
実際にいろいろと探してもらいましたが、完全バリーフリーの住宅は家賃が高かったり、公営住宅にあって、なかなか抽選に当たらなかったりと、入るのは現実的に難しいです。
バリアフリー住宅の整備をずっと待っていたら、どんどん年をとってしまって永久に地域で暮らすことはできません。
バリアになっている所は、人の手でカバーしてもらえばいいのです。私の住居も、玄関に30cmほどの段差がありましたが、ヘルパーさんたちが木製のスロープを作ってくれました。

 

 

Q:

A:

家具や家電はどんな物をそろえましたか?

家具は書類整理用のテーブルとレンジ台、布団、カーテンなどです。
家電は冷蔵庫に炊飯器、洗濯機、掃除機、地デジテレビ、FAX付電話機などです。
エアコンは設置済みで、パソコンは施設にいた時の物をそのまま使っています。
あとは、食器類や調理用品、物干し用具や洗剤なども購入しました。
金額は全部で25万円ほど使いました。

 

Q:

A:

ヘルパーさんはどれだけ利用できるのですか?

下の表が1週間のケア計画表です。
毎日、朝7時から夜の11時までヘルパーさんに介助してもらっています。
入浴する時は、2人のヘルパーさんに介助してもらっています。
現在、3つの事業所と契約していて、常に誰かが傍にいるので安心です。
ヘルパーさんのほかに、訪問看護や訪問マッサージ、移動入浴のサービスも受けています。
週に4日ほど外出します。以前、入所していた施設の日中活動に参加したり、買物に出かけたりしています。
土曜日は余暇外出を楽しんだり、日曜日には教会に出かけています。

 

Q:

A:

生活費は大丈夫ですか?

1ヶ月の収支は、だいたい以下の通りです。贅沢さえしなければ、何とか暮らしていけます。

 

Q:

A:

困ったことはありましたか?

施設生活が長かった影響で、社会のことがよく分からないところがありました。また、何でも人任せになっていたように思います。
例えば、光熱費の請求書が来ていても、自動的に引き落とされるものだと思っていて忘れていたり、薬は受診しなければもらえないということが分からず、看護師さんに直接頼んでしまったりと、施設と同じ感覚でいて失敗してしまいました。
また、外出経験がほとんどなかったことが原因だと思いますが、方向感覚がなかなか身につかず、道を間違えてしまうことがよくありました。

それから、外出には市バス(ノンステップバス)を利用していますが、バス停の道路が整備されたら、新たに縁石まで設置されて、かえって乗降しにくくなってしまったり、乗降に時間がかかることで、急いでいる乗客に苦情を言われたりしたこともありました。
いつも預金を引き出していた銀行では、行員さんにATMの操作をお願いしていたのですが、店長が代わったとたん、責任が持てないなどという理由で断られてしまったこともありました。

施設と違って、地域ではいろいろな出来事があります。でもそれは、地域で生活したからこそ体験できたことで、よい意味で貴重な勉強だと思っています。

 

Q:

A:

施設と違ってよかったところはどんなところですか?

まず、ゆったりと自分のペースで生活ができます。
食事時間やメニューが自由に決められます。おかげで、施設にいた頃と比べると、かなりふくよかになってしまいましたが・・・。
夜11時までのテレビ映画が見られることもいいですね。施設にいた頃は消灯時間があって見ることができませんでした。ほぼ毎日お風呂に入れることや、外出が自由にできることも嬉しいですね。

 

Q:

A:

最後に地域移行を考えている皆さんにメッセージを!

今は、いろんな人たちの支援を受けて楽しく生活しています。
こんな私でも出来たんだから、みなさんも絶対に地域で暮らせると思いますよ!