タイトル 樹海人魚
シリーズ
著者 中村九郎 イラスト 羽戸らみ
出版社 ガガガ文庫 初版 2007年5月29日
評価 ジャンル
  解説
 強大な力で街を破壊し、ひとびとを殺し、そのうえ何度死んでもよみがえる恐怖の存在――“人魚”。
 人間はその怪物を撃退し、飼い慣らし、“歌い手”と呼んで同類退治の道具としていた。歌い手を操り人魚を狩る“指揮者”の森実ミツオは何をやってもさえないグズの少年。しかし、記憶をなくした歌い手・真名川霙との出会いが、ミツオを変える。逆転重力、遅延時空に過不眠死。絶対零度のツンデレ・バービー、罵倒系お姉・由希にみだらなラビット――奇想につぐ奇想と流麗な人魚たちが物語を加速する!
 超絶詩的伝奇バトル&ラブ。 
  書評
 書店で裏表紙カバーに書いてあるあらすじを読んで、面白そうだと思い購入した作品だ。
 人魚のイメージといえば西洋では船乗りを歌声で魅了する美しい女性の上半身を持ったマーメイドで、日本では上半身は女性であったり半人半魚の怪物だったりするが、いずれにしろ「強大な力で街を破壊」というものではない。そうした人魚のイメージを覆す意外性と、またそうした凶悪な怪物を退治するために同じ人魚を道具とするという退廃的な設定が、何とも私好みであった。
 しかし、実際に読むと、それは予想外の衝撃となって襲ってきた。
 何なんだ、この小説は!?
 書いてある内容はわかるのだが、読んでいて混乱する。特に難しい表現があるわけじゃないのだが、なんだか内容が頭に入らない。たとえるなら道を歩いていたのに、気づけば宇宙空間や深海に迷い込んだような衝撃と混乱。特に前半部分は、そうした混乱で内容がほとんどわからなかった。そして、その内容を確認するため何度も読み直しを繰り返すが、やはり混乱が増すばかりだ。後半になればいくぶん読みやすくなるのだが、それでも時折頭がクラクラする。
 それでも何とか読み終えて書評を書こうと著者を確認し、ようやくこの著者が最近ではもっとも悪い評価をつけた「アリフレロ キス・神話・Good by」と同じ人だと気づいた。前作よりかは読みきれたので幾分かはマシに思えるが、それにしてもこの独特というには個性のありすぎる文章はどうしたものだろうか。これはある意味では才能と呼んでもいいかもしれない。どうやったら、このような文章が書けるのか本気で謎だ。
 内容がどうとかいう以前に問題がある、異彩の作品というのが本音である。今後、この著者には手を出さないようにしようと心に誓わずにはいられない作品だった。
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