タイトル | あめーじんぐ・はいすくーる 可愛い魔獣、飼いませんか? | ||
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シリーズ | あめーじんぐ・はいすくーる 第1巻 | ||
著者 | 長野聖樹 | イラスト | 芦俊 |
出版社 | 富士見ファンタジア文庫 | 初版 | 平成18年8月25日 |
評価 | ジャンル | ||
解説 | |||
「もう大丈夫ですよ……おいでおいで」 指で招くと、真っ白な子ギツネはピョンッと膝に飛び乗ってきました。お前、二尾なんですね? もしかして、昼間明太子をお供えしたお稲荷さんですか? ……抱きしめて、顔を埋めて、肉球をプニプニして、一緒にお風呂に入って寝たいくらい可愛いですっ! キャメロット学園に補欠合格した兵主和泉は、犬猫妖怪問わずお友達の女の子。ここは世界有数の魔法使い養成学校だから、人間のお友達だってできるはず! そんな和泉の期待をよそに、なぜか始まる学園あげての和泉勧誘合戦。生物部に魔導武道部、お兄ちゃんが絶対入るなって書き残した飼育同好会まで!? 肉球プニプニ♪ 魔法学園生活始業! |
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書評 | |||
毎度のごとく購入してから気づいたのだが、これは「WSW EXODUS−地平の涯へ、ぼくらは転がり続ける」と同じ作者の作品だ。その作品の書評を見てもらえばわかるように、かなり悪い評価を下させてもらっている。そのため、この作品を読むにあたっては不安が大きかったものだが、実際に読んでみると大きな進歩が見られた作品だった。 しかし、注意してほしいのはあくまで前作があまりにも悪すぎたために、そう感じただけであって、この作品自体の評価は見てのとおりあまり良いものではないのだ。 大まかな内容だが、魔法が一般社会に浸透している架空の現代社会を舞台にし、魔法使いを育成するキャメロット学園に補欠合格した主人公・兵主和泉が、世界有数の魔法使いであった兄を持っていたために様々なトラブルに巻き込まれるコメディタッチのファンタジー小説である。 まず、世界設定については、特筆すべきものはない。魔法が浸透した現代社会というのも、もはや良くある設定といってもいいだろう。しいて言えば、第1次世界大戦の飛行機にグレムリンが現れたことが魔法が認知される切っ掛けとなったという設定であるが、それ以降にグレムリンが出るわけでもなく特徴と呼べるほどのものではなかった。 登場人物たちもしいてあげるほどの個性は感じられず、悪くいえばステレオタイプのキャラクターたちばかりである。 これだけであったのならばごく平凡な作品といったところでの評価にしていたのだが、私が一番気になったのが話の展開の仕方があまりにおかしな点がいくつも見受けられたことだった。 学園町商店街のメインストリートから学園に入る道といえば、多くの学園関係者などが行き来することは想像に難くない。そんな場所になぜか立ち入っただけで退学処分になる社が建てられているのか? いくら入りたい気が起きなくなる魔法がかけられているとはいえ、魔獣が封印されている危険なものならば常識から考えられないことだ。他にもモンスターと人間の間に立つ標になりたいことが、他の部から物を盗む理由になるのか? 助けた妖狐が自分の子供の悲鳴を聞いて我を忘れて悪霊に憑かれたといっていたが、黒幕のような少年に生爪を埋め込まれたのは何だったの? 園芸部ご謹製のリビングラフレシアって、リビングって「生きている」という意味だから「生きているラフレシア」って、なんか変じゃない?(英語堪能というわけじゃないのでlivingではなく、他の単語かもしれないが)……などなど、他にもいくつもおかしな点がボロボロと出てくるのだ。こうした矛盾やおかしな点があると読み手の思考が止められてしまうのに、作者はどんどん話を進めてしまい、また次の矛盾やおかしな点が出てくるのだから、たまらない。読んでいると作者に置いてけぼりを食わされた気になる。これでは、作者は読み手のことを考えているとは到底思えないのだ。 そのようなわけで、前作よりかははるかに読めるものにはなっているものの、相変わらず読み手への配慮に欠けた自己満足の作品というのが正直な感想である。 |
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