森の恵みと沢にひたるツアー
※ 本件は他団体の関わる活動ですが、森と水HP内に掲載しています。
 他団体HPのリンクで来た場合、ブラウザのボタンでお戻りください。
HOME カレンダー 山菜・きのこ 沢登り・歩き 沢旅・イワナ 湯・雪・他
砂防ダム写真集

千曲川支流
佐野川佐野砂防ダム
中沢川中原砂防ダム

2003年3月19日
新日本婦人の会の
要望を受けて視察

5月9日
質問書の回答を
更埴建設事務所にて
きく


5月14日
見学会
女宮沢と
中沢川上流の中原砂防ダム




自然保護ページ

渓流保護ネットワーク
長野県更埴市の方から渓流保護ネットワークに連絡があり、とんでもない砂防ダムがあるから見に来てくれという。近いので私が出向いた。聖山高原から東向きに千曲川に流れ出す佐野川、中沢川が平地に出るちょっと上だ。
2003年3月19日 新日本婦人の会の方とともに、中沢川下流の中原に住んでいるKさんが同行した。昭和10年代からのようすを知っている方で、このあたりで土砂災害はなく、川の屈曲部が少し削れる程度だったとのこと。

佐野砂防ダム

高さ14.5m 長さ95m
竣工 平成7年3月
事業費 4億800万円
砂防ダムの下の方の四角い穴から流れているのが川の水であり、河畔の果樹、道路を考えると大きすぎるように思える。下に見える道が使えなくなったので上に道(林道)をつけかえてある。
上流側

雪の脇に水が細く流れ、その手前は田んぼ跡だという。下流側の写真と比べても土砂の堆積が少ないことがわかる。
そもそも砂防ダムは不要なのでは?
必要があるとすれば砂防ダム下流200mほどにある高速道路(高架)の橋げたの保護であろう。大雨時の水勢にもよるが砂防ダムよりも橋げた付近の護岸強化のほうが環境破壊度が小さく、安くできたのでは?

すぐ南の中沢川に入る。
中原砂防ダム

高さ14.5m 長さ89m
竣工 平成6年3月
事業費 4億7400万円
(5億以下は県議会の承認不要)
こちらは佐野川よりさらに小さい川なのに同規模の砂防ダム。
集落までの500mほどは完全に3面張りだ。
平成に入ってから工事されたそうだ。
川が平地に出るとすぐ集落があるのだが、これは古いそうで、実際に住んでいるKさんは護岸前も洪水などなかったという。
集落の下流では河川改修が行われているが、この3面護岸で水が一気に流れて威力を下にもたらしていると考えられる。

既設の砂防ダムを問題視しても撤去するのは現在困難であるが、これ以上の砂防ダム建設が計画されているかどうかを調査することにしている。

5月9日 更埴建設事務所にて、3月に出した質問書の回答を聞く。
PC画面をプロジェクターで映し出して
説明してくれた

質問書への回答を文書でいただくとともに、砂防事業全体の考え方を説明され、またいろいろ議論できた。質問書を出すときは居丈高だったと聞いていたが、今回は低姿勢(特に戸谷さん)でていねいだった。まとめてみると
1 既存の砂防施設について
説明概略:佐野川、中沢川とも土砂流危険渓流であり、氾濫すると人家や鉄道が被害を受ける。施工方法については古いやり方だったかもしれない。

三井コメント:中沢川の出口には古い(少なくとも昭和初期からの)集落があり、そこに住んでいる方の話でもかつて洪水はなかったと聞いて、危険性は少ないのではないかと考えた。が、小谷村などの例で古い集落でも土砂流でやられた例はあるとのこと。まあ、それは否定できない。それにしても砂防ダムはでかくて土の抜けにくい古いタイプだし、その下が集落まで切れ間なく三面護岸で水勢を強めるしで、センスが悪いのか、わざと金を使えるだけ使っているのか(多分両方だろう)。

2 今後の砂防施設計画
説明概略:(1)中沢川出口の中原集落付近の河川改修(2)女宮沢砂防ダム2基

三井コメント:佐野川については80%、中沢川については70%(いずれも口頭での数字)土砂をとめる施設を作っていて、いまのところこの2河川に砂防ダム建設の計画はない。ただし「将来にわたって作らないという意味ではありませんよ」と明言した。既存ダムの浚渫の話をしたときに積極的でない感じだったが、ひょっとして満砂させて上に砂防ダムを作ることを考えているのでは、と言ったら否定しなかったなあ。よくあるパターンだもんな。
(1)については、上のほうの三面護岸の続きの部分。土砂が流れなくなったのと水勢が強くなったのが改修を必要とする原因ではないかと考えてきいてみた。三面護岸が水勢を強めるのではないかと聞いたら、きっぱり「そうです」と認めた。しかし縦侵食や横侵食を防ぐ必要があると主張するので「もともと土砂が流れてくるのと削れるのがバランスしてたんじゃないの?上にでかい砂防ダムを作るから土砂がこなくなったんじゃないですか」ときくと、ダイレクトには認めず、近頃の近自然護岸やスリット式ダムの説明をしていた。まあ認めたようなもの。砂防ダムが平成6年竣工なので、まだそんなことを積極的に進めていない時期だったのだろう。平成9年の河川法改正後は、3面護岸だと補助金が付かないようになったと言っていた。
(2)は地図で説明されても沢とわからないところ。集落の背後に急斜面があるらしい。計画策定が平成14年、この2つで計画流出土砂量100%をカバーすることから、他に仕事がないもんで可能性のあるところにめいっぱい作ろうとしているのではあるまいかとちと勘ぐったりもするが、私は現地を見ていない。新日本婦人の会の方が見ることになっている。

3 その他砂防一般についての議論

土砂を下に流すように考え方が変わって来ています、危険なところに人がすまないのが一番です、などこちらの考えを認めてくれるので、拍子抜け。おおむね普通の人が普通に考えればわかるように変わりつつあるのだろうか(今まではなんだったんだ?)。100年に1回とかという事象を相手にしているのでわからないところはありますが。

砂防ダムの満砂の話。砂防ダムが土砂で埋まったらどうするんだという素直な意見に対し、いっぱいになっても役に立つんですよ、という話を建設側はする。
図の調整部分に土砂がたまり、だんだん流されて平坦になり、また土砂が流されてきたらたまるという。そりゃ否定はしないけど、そもそも自然の川にそういう場がある。それにひどい土砂災害が起きるときって、すでに調整部分がいっぱいだったりすることが多いんじゃないでしょうか。そんなことのために税金を使って環境を破壊する価値があるんだろうか。場所にもよりますが。
山でよく見る急傾斜の砂防ダムの小さいのはいつも調整部分がいっぱいで立っていて、崖の一部となっている。こりゃー砂防ダムなくてもなんも変わらんぞー、作ってすぐ一雨ぐらいで埋まったんだろうなーてなのがたくさんありあますよねー。作るのも危ないだろうな。

5月14日 別のグループで見学会

松本から田口さん(渓流保護ネットワーク)も来る。
1 まず砂防ダム計画のある女宮沢へ。佐野川の支流というか、左岸の山すその斜面に佐野集落があり、そこの上部が谷状になっている。
これが女宮沢。正面の小屋の左に小さな側溝があるが、それが水流。左が公民館、この下に人家もある。家は新しいが、集落は古いそうだ。
ここに高さ8mx長さ40mと高さ7mx長さ33mの2基の砂防ダムを建設する。平成14年計画策定&着工、平成19年完了予定、事業費2億円。発注未定。完成時整備率100%。
昭和62年事業の谷止工(治山)がある。ここは谷が浅いこと、集水面積が狭いこと、集落が古く、もともと細い側溝しか作らなかったことなどから、洪水は問題ないだろう。万が一の地すべり対策と考えてよかろう。
計画の砂防ダムはこの小沢にしてはデカイ。しかし大災害は人間の予想を上回って起きるもの。万が一の地すべりの対策というなら砂防ダムでなく、危険地域の人家を移転すべき。しかしすぐ移転は住民が納得しないだろう。
こんな理由で砂防ダムを作っていたら、金は足らんし、環境は破壊されるし、根本的な解決にならず将来さらに金がかかる。
災害の恐怖は住民でないとわからないので、住民の意見はとても重要だ。が、お金を負担しなくていいし、ダムを作ってどれぐらい悲しいかすぐにはピンとこないし、お上に漠然と従うクセがついているもんだから、その場しのぎに作ってくれるのは結構だよ、となるのではないか。
せめて受益者(住民)がお金を負担しないとこのシステムは崩しにくい。今まで砂防ダムなしで住んできたんだからこれからも要らない、と考えるか、万が一のために、しかも根本的解決でないのに、お金を出し、川を壊して砂防ダムを作るのか。

2 佐野川

これは前に見たとおり。土砂は実際にはたまってなくて、上流にも数個の砂防ダムがある。やはり万が一の地すべり対策ということか。
佐野砂防ダム下右岸に使われていない公園がある。砂防工事の一環として作ったと思われる。砂防ダムと果樹園でたいした景色でもないが、開けた場所である。

3 中沢川

沢床の互い違いの溝は魚がさかのぼるためのものだという。でもその上の段差を登れません。
砂防ダムの上流の川原は森になってました。。。この奥の右俣に後で見せる中原砂防ダム(これと同じ名前)がある。
で、奥に行くと、左岸に崩壊地があり、よく見ると
谷止工というのか、砂防ダムのようなものが崩れた崖にへばりついている。まあ崩壊を少々食い止めたり遅くしたりしているかもしれないが、人家のある谷の出口までは距離もあり急でもない。必要ないんじゃないかい。(見にくくてすみません)
も少し上に
もひとつの中原砂防ダムがある。昭和53年着工、高さ20m、長さ68m。これは上流側。堆砂率30%というところか。
道が荒れてきて車ではこれ以上行けない。建設事務所の地図にはなかったが、国土地理院の地図にはさらに上流にも砂防ダムがある。
見学に来られた方は有事法制、エネルギー問題、男女参画など問題意識を持ち、活動されている方々でした。更埴の婦人は活発。県内国内各地に砂防ダムはたくさんありますので、こういった人々が声を上げていけばこれ以上川を壊さなくてすむようになると信じたい。国土交通省は土や水を下流に流すよう方針を変えているわけですし、わが長野県は脱ダム宣言をし、県民の声をきき、公共工事によらない方向を目指しているのですから。