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森 博 嗣 フ ァ ン 倶 楽 部
ふ ぇ
森博嗣氏講演会
「ミステリィで逢いましょう」
レポート
 キーワード 

入門(Primer)
原理(Principle)
私的(Private)
素数(Prime Number)
霊長類(Primate)
慢心(Pride)」


*INDEX*
くりはらいくり(No.00066)「ライブな森先生編」
水都(No.00163)「千葉県成東町講演会レポート」



Reporter:くりはらいくり(No.00066)Title:ライブな森先生編
 2000年第2回目の講演会。残念ながら、濃密な2時間を再現するにはスペースが足りませんので、ライブでしか見られない先生の横顔をスナップショット!(という気持ちで)レポートさせて頂きます。

 まずは導入部。自己紹介をされた時に先生は「僕は『ミステリィ作家』ですが」とおっしゃいました。が、何やらご自分でご自分の発言に驚かれたご様子で、笑いながら「こういったことを言ったのは初めてです」「どうも、教育長さんのお話に押されているようです」と言い訳(?)されていました(教育長さんのお話は、なかなか興味深いトークだった模様)。というのも、先生は「近況報告」でもインタヴューでもこれまでのご講演でも、「(他者がどう認識しているかとは別問題で)自分では自分を『作家』とは認識していない」と繰り返されてきたからですね。私は先生の「『作家』ではなく『読者』である」というスタンスに何かしら崇高なものを想像していますが、こんな一言が聞けてしまうのもライブならでは。(かな?)

 今回も、ちょっとした一言に「ほお」と感心させられたり、無邪気(そう)なご発言に背中がサムくなったり、ほとばしるジョークにどう反応したものか一瞬考えさせられたり、という森先生テイストなご講演でした。その感覚をお伝えするのは難しいのですが、例えばご自身の「小さい頃」のミステリィ体験についてお話をされた場面では、「小さい頃……」に続けて「今もそんなに大きくありませんが」という一言(会場笑)。あるいは、登壇時に首から下げていらしたサングラスがマイクに当たって音を立てるのに気付いてサングラスを外され、「こうやって少しずつ最適化されていきますから」と冷静に予告(「最適化」は頻出単語なのです)。最後の質議応答の時も、ブロックの中央にいる質問者に、会場の方が苦労してマイクを渡そうとしているのを壇上からご覧になって、「マイクを座席の端の人から手渡して行けば良いんじゃないですか? そうやって最適化していきましょう」とアドバイス(これであなたも最適化)。話戻って、ミステリィの映像化についての真面目な講義部分では、「探偵が推理を披露するシーンを映像化したら台詞が長くて覚えるのが大変だ」「そんなシーンを見ていたら、寝ている人も眠くなる」と、笑顔でミモフタもないことをおっしゃるのでありました。

 ご講演のなかでも多くの人が気になった話題といえば、「読者から受ける質問に、林警部に対して『男としてどうなんですか?』というのがある」というお話でしょうか。わたくしは非常に気になりましたので、後ほどお食事会場で改めて、「どうなんですか?」と質問してみたのですが、「さあ……」とか何とかはぐらかされてしまい、ご回答を得ること能わずでした。力不足をお許し下さい。あるいは、ジョークのお話の中で「シュウマイおじさんの孫娘が大きくなって恋人ができる。しかしやがて恋人と別れの時がくる。別れのシーンで、彼は『君との2年間は綺麗な思い出だよ』とか言って背中を向けて立ち去ってゆくのですが……、『君との2年間は綺麗な思い出だよ』なんて僕はよう言いません」とコメントされたことなど(何故2年?)。どうも、私のノートにはこんなことばかり書いてあるのです。シュウマイおじさんについては「浮遊工作室」入室者記念スーパーショート「Mild Seven Super Shorts」と「Seven Bits Parallel」を参照してください。

 それから恒例、ご自分の作品紹介。納得のいく長篇は『黒猫の三角』であるとか、発行されたばかりの『魔剣天翔』は評判が良いとかおっしゃっていました。そして、「最新作の評判が良い」ことから読者のタイプの分析を始められ、「そろそろ読者も淘汰されて、辛抱強い人だけが残っているため、好意的な反応が多くなるのだろう」との見解を提示。さらに、そんな読者は「そこまで森作品を辛抱強く読んできた『自分を正当化したい』という力が作用して誉めているのだろう」とも。後者のご発言には大いに異義がありましたので、立ち上がって「違います! そんなんじゃありません!」と叫ぼうかと思いましたが、会場騒然となって講演中止になるのを案じ思いとどまった次第です。もっとも、小説作品については「読者に『この作家の本をもう1冊読んでみたい』と思ってもらえたら勝ち」だとのことで、先生にはとっくの前から完敗なのですけれど。

 以上はご講演のごくごく一部でした。小説作品はもちろん「近況報告」やエッセィで森先生のユーモアは充分に発揮されていますが、実際にライヴで先生を拝見すると、文章に現れている以上にユニークで、ハートウォーミングな(部分をもっていらっしゃる)方だということを感じます。ここで少しでも、そんな感覚をお伝えできればと思いました。

 最後になりましたが、今回の講演会でも、森ぱふぇは聴講予約枠を頂戴しました。森先生と、主催者である成東町図書館さまに、森ぱふぇスタッフとして、そして一会員として、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。また、当日は森ぱふぇのスタッフとして受付に立たせていただきましたが、受付にご協力下さった会員の皆様にも感謝します。これからも森ぱふぇをよろしくお願い致します。
 
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Reporter:水都(No.00163)Title:千葉県成東町講演会レポート
 天気予報は雨。けれどまだ降り出さないうちに会場に着きました。新しい建物の自動ドアをくぐると、正面にPRAMM受付、右手奥にはホールの入り口兼整理券配付所。PRAMM予約者の場合、まず正面でチケットを受け取ってから整理券をもらう、という流れでした。しかし、PRAMMの受付が始まる前すでに整理券をゲットした方もいらっしゃったようで・・トップの方は何時にいらしていたのでしょう?

 講演会はまず、図書館長さんと教育長さんの御挨拶で始まりました。第一回の「文化講演会」ということで、お話を要約すると・・「大盛況でとても嬉しい」。私も、森先生の講演が聴けてとても嬉しかったです(にこにこ)。そしてとうとう森先生の御登場。

 お話はまず、前日のスケジュールから。京極夏彦さんの展覧会に行かれたこと(最後の質問時間でのお答えによると、京極氏の文庫の表紙につかわれた人形が御覧になりたかったのだそう)、宿泊した帝国ホテルで乱歩賞の受賞パーティが開かれていたこと(でも全然御存じなかったそうで・・講談社主催なのに)、御自身が雨男であること(納得)、それから、訪問されたアミューズメントパークが皆つぶれてしまうこと(伊勢のレオマワールド・ビーチランド・宮崎シーライン等)をお話されました。講演会ではいつもこのように、本題に入る前ちょっとしたお話をして下さいますけど、これは受講者の緊張を解こうという先生のサービスなのでしょうか(^^)

 さて本題です。全体を御紹介するのは他の方におまかせして、印象的だったことを3つだけ。
 まずはミステリィについて話された時、子供用のクイズの本については「イラストが一番こわかった」と仰る一方で、「考える人間がこわい。視点を作っていく手法がこわい」と仰ったこと。表面にあるもの(トリックとか犯罪それ自体)ではなく、それより奥のものを先生は見ているのだな・・と思うのと同時に「こわい」というのはとても魅力的なんだな、と思いました。そういえば私も森先生の作品を読んだとき、登場人物について「こわい・・」と思うことが多々ありますが、先生は登場人物そのものではなく、そういう人物とその世界を作り、それを効果的に読者にみせていく作者の思考と技巧がこわい、と仰っていたのでしょうか。
 それから「一頭の黒い羊」のお話。「楕円だけでかける羊」は大層可愛かったです!もちろんそれだけでなく、最後の方のコメントも面白かったのですが、詳しく書くと著作権の問題が・・ではなく、私程度のレポートで知るのは勿体無いと思うので。話の内容とともに「先生の語り口」がとてもポイント高いと思うのです。それとあの羊・・可愛いかったです(しつこい)。
 それから、最後にお話頂いた「森ミステリィ上級編」は、先生の作品を読んでいればいるほど楽しい、という内容でした。完全にネタばれになってしまうので詳しくは書けませんが・・。まるで「やりたい人だけがやる宿題」のようで、講演会終了後、帰りの電車での話題をさらいまくっていたようです。この話に関して先生は「気にしないように」と仰っていましたが、これが気にならない読者はいないでしょう。とても心踊るお話でした。

 今回は森先生の講演を聴くのは初めて、という方が多かったせいもあり、以前の講演会と同じお話も少しありました。でも何度聴いても面白いです。
先生の講演会はまるで音楽を聴きに行くようだ、と思います。CDで何度も聴いて覚えているけれど生で聴きたい。新作ももちろん嬉しいけれど、耳に慣れたものも何度でも聴きたい、そんな感触。先生のお話にはそんな魔力が潜んでいるように思えるのです。

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