「ただいま」
ドミニクは重いためいきをつきながら、家と作業場の間にある建物のな
かにそっと入っていきました。
中ではたくさんのたくましいオスネコたちがテーブルで、ふうふうと
息をふきかけながら夕飯を食べていました。
ドミニクはそのうしろをしずかに歩き、たれさがった青い布ののれん
をくぐって、夕飯をよそおうとしました。
すると。
「まあ、このコはまたケンカだよ」
白いエプロンをしたおばあさんネコが三猫、おたまをもったままドミ
ニクをとりかこみました。
ドミニクの家は大工をやっています。それも大きな教会の石組から、
そこにとりつける雨どいや風見鶏まで、何でもつくる大工です。
作業場では毎日おとうさんやふたりの兄さんの他に、たくさんの職猫
さんが働いていたので、三猫のおばあさんたちは、そのみんなの食事を
つくるために、朝から晩まで手伝いに家にきてくれているのです。
それはもうドミニクが生まれる前から来ていました。
「うるさいなあ、どいてくれよ」
ドミニクはこのおばあさんたちがたいそう苦手で、おぼんを持ったま
ま立ち往生していました。
「まったく、ドロや草をつけたまま台所に入ってきてねぇ」
「おまけに鼻にも、ばっちいものつけてさぁ」
おばあさんたちは、ドミニクのいうことなどまるで聞こえないように
とりかこんだままいいたい放題を続けています。