ドミニクはたとえおおぜいで遊んでいても、ビリジバンのピカピカひ
かる鳶色のひとみと、夜の町を閉じこめたような黒のまさったキジ模様
の毛並みを、いつも目のかたすみでおいかけていました。
そうすればかならず、おもしろおかしい事件にめぐり会えたからです。
とつぜんヒゲの鳴り出したビリジバンのおとうさんが、遠い音楽学校
に行ってしまうまでは。
ドミニクはまゆをしかめて、道にペッとつばをはきすてました。
するととつぜん大風がふき、道のりょうわきににょきにょきとはえて
いる背の高い草々が、おこったように大きくゆれました。
足元には小さなつむじ風ができて、すぐに消えます。
ドミニクはいたいのをがまんして、もっとはやく歩きだしました。
ビリジバンの元気がなくなってから、ドミニクは毎日毎時間ずっとい
つも、この細道をひとり歩いているような、さみしくつまらなく心細い
思いを味わっていました。
(なんだい。とうちゃんがいなくなったくらいで、あそこまでふぬけに
なるなんて)
ドミニクは無口になり、めったに走ることをしなくなったビリジバン
が、だんだんきらいになっていきました。
そしてビリジバンのことがだんだんきらいになる自分も、おなじくら
いきらいになっていったのです。