ドミニクはイライラした風で木の上から飛び降りました。ビリジバン
はライミーから飛行機を受け取ると、ドミニクの前までゆっくりと歩い
ていきました。
「ぜんぶを青でぬったあとに、翼のところだけ丸くニカワをぬって、上
から銀をふきつけたんだ。その方が飛行機の重たい感じがでるから。か
わいたニカワをうまくはがしたから、青いところもまん丸だ。やりそこ
なうとゆがむのに。でもプロペラをなにでけずりだしてどうつけたのか
は、ちょっとわからないな。どうやったの?」
ビリジバンはさみしげな鳶色の目で、飛行機を差し出しました。
「へっ、だれがさわっていいっていったんだ。かえせよ。おまえみたい
なノロマがさわると、銀の色がにぶくなっちまう」
ドミニクはビリジバンの手から、乱暴に飛行機をもぎとろうとしまし
た。
「あっ、やめろよ」
そのときの手のあたりどころが悪くて(というか、わざとねらった風
に見えなくもありません)、ヘルメス号は草の上にたたきつけられまし
た。いちばん細いプロペラの付け根がぽっきりとおれています。
うしろから、みんなのがっかりしたため息が聞こえてきました。