町並みがきれると、みじかい草におおわれたあの丘はもうすぐです。

 飛行機を持った子を先頭に、ドミニクたちは急な坂道を一気にかけあ

がります。

「ぶうーーんっ」

 ヘルメス号を持った子ネコはもう何猫か順番がかわっていました。今

かかげている子は、丘の上に二本たつ大きな木のまわりをかけまわって

います。

「つぎはおれの番だ」

 追いついたべつの子ネコがヘルメス号をとりあげて、木のまわりをぐ

るぐるかけまわります。

 ドミニクは木にのぼって枝にこしかけ、みんなが遊ぶさまを見下ろし

ました。

「ねえドミニク、ヘイグがまた持ってるよぉ、ぼくの番がまだなのに」

 いちばんちびネコのライミーが、ドミニクを見上げていいつけます。

「おい、ヘイグ。ライミーがまだだって。貸してやってくれ」

「ちぇ、ライミーはグズのくせに、いつも文句ばっかりだ」

 ブツブツいいながらも、ヘイグはドミニクのいいつけにしたがって、

ライミーにヘルメス号を渡しました。

 ドミニクはけっこういい気分になり、にっと笑いたくなりましたが、

がまんするためライミーに、むずかしい顔でうなずいてみせたりしまし

た。

「わーい」

 こんどはライミーが、丘のてっぺんの木のまわりをかけまわります。

 みんなはちょぴり疲れたのか、走るのをやめ、飛行機をかざして走る

ライミーの姿をただ立ってながめるようになりました。

 いい風です。ライミーのうれしそうな笑顔に、ドミニクはさっきとは

ちがった意味でいい気分になり、こんどは自然ににっと笑うことができ

ました。

 そこへ、黒っぽいキジもようの子ネコが遅れてやってきました。

 すがたを目にしたドミニクの顔からは、風でとばされたように笑みが

はがれていきます。

「よお、ビリジバンじゃないか。早かったな」

 トゲのあるドミニクの声に、みんなはつばを飲みこみ、ライミーまで

走るのをやめてその場に立ちつくしました。