「みろよ、ほら」

 学校が終ると、ドミニクはかばんの中から朝つくった「ヘルメス号」

をとりだして、仲間たちにみせませした。

「わあ、すげえ」

「そっくりだ」

「なあ、ちょっとかせよ」

 子ネコたちはたちまちドミニクをとりかこみました。

「いいけど順番だぜ。こわすなよ」

 ドミニクはひとりの子ネコの手の上に、木製のヘルメス号をそっとの

せました。

「ぶうーーんっ」

 木製の飛行機を手にうけた子ネコは、ヘルメス号の胴のあたりを持ち

空にかざすと、いきなり走りはじめます。

「あっ、待てずるいぞ」

 それを追ってほかの子ネコたちやドミニクも、いっせいにかけだしま

した。

 あとには黒っぽいキジもようの子ネコだけが、ひとりぽつんと立って

います。

「おーい、つぎはおれの番だってば」

 ヘルメス号を持った子ネコを先頭に、ドミニクたちはあの丘へと続く

石だたみの道を声をあげてかけていきます。

 学校のある町は道が細く、いりくんだ小路がたくさんあり、はんたい

に建物は高くて、あたりはひるまでもひんやりとしていました。そうし

ていつもすこし暗いのです。

 ドミニクは町の中にはいると、まるで工作でつかうキリの先のように

心が細くとがっていくように感じました。

 でもそれは、ちっともいやな気分ではありません。むしろとびきりの

いたずらをする前の、わくわくした心地に少しにてさえいます。

 ドミニクたちは走りながら、ポストについた風見鶏(かざみどり)を

たたいてはぐるぐるまわし、道のわきのベンチでいねむりをしていたお

じいさんをはっとおこして、風のように町の中をかけていきました。