ヒゲのなった夜から、音楽学校へ転入しに出発する日まで、ドミニクはひたすら
待って待ってすごしました。
あれからビリジバンは夕食を食べにきません。
いいえ、夕食どころか、学校にも来なくなりました。
ドミニクはすなをかむような思いで、毎日学校にかよい、家の食堂で夕飯をた
べました。
夕飯には弟たちふたりだけが、遠い道のりをてくてくと歩いてやってきます。
そして帰りはサムラ兄さんにつれられて、ロバの馬車でかえるのです。
ドミニクは、ビリジバンに会えるのを、ひたすらに待ち続けました。
そして、待ってることが伝わらないように、みんなの前ではひたすら元気にふる
まいました。
みんなも、ドミニクが音楽学校へいくのをおしんで、すこしの間でもドミニクと
あそびたがりました。
あの飛行機のおりた丘で、風にふかれるたび。
ドミニクはビリジバンのにおいがしないか、鼻をそっと動かしました。
そして何か気配を感じるたびに、あの黒のまさったキジもようの毛並みが丘に
あがってこないかと、何度も何度もふりかえりました。
でもビリジバンに会うことはなかったのです。
ドミニクは心がじりじりと焦げるような心地で、家の食堂にかかっているカレン
ダーに毎日×じるしをつけてすごしたのでした。