走って、走って走って、ドミニクはどのくらい駆けたでしょう。
あの昼でもさみしい、ざわざわと背の高い草のそよぐ道も、夜はポストの風見
鶏がキイキイと鳴る町の道も、ドミニクは風のように駆けぬけました。
とちゅうちらっと、ほんのちらっと「ビリジバンはいないだろうか」と思いました
が、どんなに夜に目をこらしても、あのときめくようなキジもようの毛並みは見あ
たりません。
ドミニクはいつしか、町の広場にある教会の前に立っていました。
中にはあかるい灯がゆれているのです。
重たい木のとびらをあけて、ドミニクは中に入りました。
中にはほそい廊下があって、とちゅうにひとつよろい戸の窓があり、奥にとび
らが待っています。
廊下をとおりすぎようとすると、窓がトントンと鳴りました。
「いましょうか。行きましょうか。話しましょうか」
よろい戸の中から声が聞こえます。
「行ってください」
「それでは失礼します」
ドミニクは答えを聞くと、奥のとびらを開けました。
中には誰もいません。
そのかわり、たくさんのいすがならんだその奥に、数え切れないほどのろう
そくが、しずかにしずかにもえていました。