木でできているはずのヘルメス号の銀色のプロペラは、ほんものの飛行機
のようになめらかに回り出しました。
ドミニクもビリジバンも食事をそっちのけにして、おたがいの頭をすりつけん
ばかりに近より、目をさらのようにして見ていました。
しまいにドミニクは「へるめす号」を持ち上げると、プロペラのつけねをまじま
じとのぞきこみます。
「なんか、小さくて丸い、砂つぶみたいな鉄のたまが入っている」
「ほんとだ」
わたされたビリジバンも感心してプロペラのつけねに見入っています。
「ありがとう、カカラドにいちゃん。ねえこれ、どうやってつくったの」
カカラド兄さんは、腕組みをしてすこし考えてから、頭をかいていいました。
「いうの、めんどくさい」
そしてドミニクにのっそりとせなかをむけると、食堂をでていこうとしました。
「ま、まってよ、カカラドにいちゃん」
「なんだ」
「あ、あのさ、これ、ちょっと……バラしてみても、いいかなあ」
「おまえな」
カカラド兄さんは、くびだけくるっとふりかえります。
「それはおまえのだ。おまえがどうしようと、勝手だ」
怒ったような声でいうと、カカラド兄さんは小山のように大きいからだをゆす
って、食堂を出て行ってしまいました。