おかあさんに言われたとおり、ドミニクがビリジバンの家によった帰

りには、もう丘の上に広がる空は、とてもこいオレンジ色に染まってい

ました。

 ドミニクとビリジバン、それにビリジバンの小さなふたりの弟は、ひ

もでしばったたくさんのうさぎの毛皮を運んで、ドミニクの家へむかい

ます。

 たばねたうさぎの毛皮はちょっぴり重かったのですが、吹く風は噴水

の水しぶきのように心地よく、ほてったほほにすぎていきました。

「おまえそれじゃあ、毎日帰ってから夕飯とかつくってたんだ」

「うん」

「たいへんだったんだな」

「だからこうやって夕飯に呼んでもらえると、ほんとうに助かるよ」

「いや、こっちこそ、こんなにたくさんうさぎの毛皮をもらえて、大

助かりさ」

 ドミニクもビリジバンもあざやかなオレンジ色の夕日の方へむかって

ぽつりぽつりと話しながらすすんでいきます。

 ドミニクのおかあさんはビリジバンのおかあさんに、なめしきれずに

残っていたうさぎの毛皮をもらうかわりに、ビリジバンとその弟たちを

毎日晩ご飯によぶようにお願いしたのでした。

 うさぎソーセージを作っていたビリジバンの家には、うさぎの毛皮も

たくさんあったのです。

「うちにおいといてもな、もうとうちゃんがいないから、ちゃんと最後

までなめせないんだ」

「そうか。うちなら職猫さんがたくさんいるから、一日で終わっちまう

さ」

 ふたりは足元を見ながら、ゆっくりしっかりと歩いていきます。

 ことばがとぎれると、ドミニクはさっきいったビリジバンの家を思い

出しました。

 玄関をあけてでてきたおばさんのつかれた笑顔や、何をしているわけ

でもないのにあせり気味のビリジバン、それにどうしていいのかわから

ずぼおっとしている弟たち。

 でもうす暗い家の中にはふしぎな安らぎがあり、ドミニクはドアが開

いたときに、ほんのすこしだけほっとしていました。

 しばらくだまったあと、ドミニクはふと思い出したように横をむいて

ビリジバンに話しかけました。

「なあおまえ、大きくなったら、いったい何になるんだ?」