そこには小山のように大きなネコが、ドミニクのこわれた飛行機をいじ
くっていました。おなかと足の先が白い、茶トラのオスネコです。
「あっ、カカラド兄ちゃん、それぼくのだよぉ、かえしてくれよぉ」
「……」
ドミニクはカカラド兄さんの腰のあたりを、こぶしでどんどんたたき
ましたが、カカラド兄さんは返事もしてくれません。
片方の目に機械の中を見るための、まるいつつの形をした虫めがねを
はめて、折れたプロペラの軸(じく)のあたりを、とくとくとながめて
いました。
「これだと極小粒か? でもどうやって入れるかなあ……」
口の中で同じ事をいく度もつぶやいて、ドミニクの方を見ることもし
ないのです。
「ねえ、かえしてよぉ。ねえったら、かえしてよぉ」
ドミニクはカカラド兄さんの腰のあたりを、たたきつづけています。
しかしカカラド兄さんはあいかわらず返事もせずに、小山のような体
の向きをかえ、こわれた飛行機を虫めがねでながめながら出ていってし
まいました。
「ひどい、あんまりだ」
ドミニクがまだゆれている青いさがり布をじっとみつめてつぶやくと
こんどは調理場からサムラ兄さんとおかあさんが出てきました。