そこへ布をくぐって、サムラ兄さんが入ってきました。
「なんだおまえ、またケンカか。あやまりにいうおれの身になれっ」
サムラ兄さんは、わけも聞かずにドミニクの頭をポカリとなぐりまし
た。
「だってビリジバンは、ぼくの作った飛行機をこわしたんだよぉ」
ドミニクはあわれっぽい声をだして、布のふくろからこわれた飛行機
を出すと、サムラ兄さんに見せました。
「なんだって。おまえ、あのうさぎソーセージを作ってた家の子とケン
カしたのか。あの子はおとうさんが音楽学校にいってから、おかあさん
が働くるすに、毎日小さな兄弟の面倒をみている感心な子じゃないか。
そんな子を……ああ、ケガなんかさせてたら、どうしよう」
「でも悪いのは……」
「うるさいだまれっ! ねえ、かあさん、聞いてくれよぉ」
サムラ兄さんは、ドミニクの頭をもういちどポカリとやると、さっさ
と調理場の中へ入っていきました。
ドミニクはまた重たいためいきをつくと、こんどはだれかの気配を感
じてふりかえりました。