ミルドラ校長先生です。

 シニファンは怒られるかと思って、すこしどきどきしました。

「そんな顔をしなくてもだいじょうぶですよ。ここは見つけたネコが、

自由につかっていいところなのですから」

 ミルドラ校長先生の毛なみは、月の光でふちだけがぼんやりと光って

います。その毛なみの間には、銀のバイオリンがはずかしそうにつやめ

いていました。

「こんどはわたしに弾かせてくださいね」

 ミルドラ校長先生はしずかにバイオリンをかまえると、細いつめをバ

イオリンの弦にかけました。流れ出したのは学校に入学した生徒がさい

しょに勉強する、いちばんかんたんな練習曲です。

 演奏も特別にすばらしいものではありませんでした。しかしミルドラ

校長先生の奏でる音色はしっかりとしてゆるぎなく、どこまでも澄み切

って聞くものをはげますのです。

 シニファンはその演奏をどんな名曲よりすばらしいと思い、終わると

夢中ではくしゅをしていました。