シニファンはそれからも、まいにちまいにちバイオリンの練習をしま

した。

 けれどあれから弾きおわるとかならず、自分のそばでだれかがニッと

笑うようなここちがするのです。

(知っている。ぼくは、知っているさ)

 シニファンはとてもさみしくなりました。そのニッという笑いは、こ

わさでもいかりでもなく、ただ底なしのさみしさをつれてくるのです。

 夜は、いつまでもねむれなくなりました。

 いっしょの部屋ではルラン先生がしっかりとねむっているのに、シ

ニファンの目はぱっちりと開いて天井をみつめています。

(こんなときに、バイオリンが弾けたらいいのに)

 シニファンはすこしのあいだ、あれこれと考えていました。

(そうだ、時計台の機械室に行く階段なら、だれもいないはずだ)

 バイオリンのケースをとると、シニファンは足音をしのばせて部屋を

でていきました。