つぎの朝、シニファンとルーニャとドミニクは、ミルドラ校長

先生に

よばれて、校長室に行きました。

「みんな、きのうの演奏会ではおとなたちにまじって、よくがんばりま

したね。たいへん感心しました。ごほうびをあげたいと思うのですが、

何がいいですか?」

 ドミニクもルーニャも「いわしのハンバーグが食べたい」といってい

ます。

 シニファンも、ずいぶんむかしに食べたことがあるように思いました

が、もう味を忘れていました。

(ふたりとも、くいしんぼうだな)

 とてもゆかいな気分です。ミルドラ校長先生も笑っています。

「ところで、シニファンはなににしますか?」

(え、ぼく? ぼくはいったい、なにがほしいんだろう)

 シニファンは考えました。そしてルーニャとドミニクのほうを、ち

らっと見ました。

(ぼくがこの子たちのために、してあげられること)

 ほんのみじかい間ですがシニファンはたくさんのことを考えました。

 考えているあいだ中、シニファンの中にうずまいていた力づよいなに

かは、もっともっと力を増して、シニファンののどをこがすように熱くしました。

 とてもがまんできません。思わず口を開いてしまいました。

「それでは校長先生、ぼくたちのために一曲お聞かせ願えませんか?」

「え、シニファン、声が出るようになったの!」

「あ──」

 シニファンはりょうてで口をおさえました。

 体中がさっぱりとかるくなって、とてもすがすがしい気分です。

「わかりました。では一曲お聞かせしましょう。みんな、いすにおすわ

りなさい」

 ミルドラ校長先生は、なにもなかったようにほほえみながら、バイオ

リンを弾きはじめます。

 それはシニファンの今の気持ちのように、たいへんにさわやかでやさ

しい音色でした。

終わり