「歩けるかな?」
若いオスの先生はかがんでシニファンのわきをささえると、そっと立
ち上がりました。
先生は声をあげて泣くシニファンに肩をかしながら、何もいわずにゆ
っくりゆっくり歩いていきます。
そうして部屋につくと、そっとベッドに寝かせました。
シニファンははげしくしゃくりあげながら、まだ泣いています。
「ぼくは、ここにいた方がいいかな」
しゃくりあげながらも、シニファンはくびを横にふりました。
「そうかい。じゃあ、出て行くことにしよう」
先生はいこうとしました。が、ドアを開ける前にふりかえっていいま
した。
「シニファン、きみは今日はこのまま好きなだけ眠るといいよ。じつを
いうと学校中のおとなたちが、きみがわがままやむりをまったくいわな
いことを、ちょっと心配していたんだ。校長先生は特にね。だからぼく
は、今のきみを見てとても安心しているよ」
そういって先生は、出て行きました。
シニファンは先生の出ていったドアを長いこと見つめていましたが、
最後にはときどきしゃくりあげながらもとうとう眠ってしまいました。