そのときです。

 シニファンのくびすじの毛並みが、いっせいに逆立ちました。

 何かよくない予感がして、頭がずきずきと痛み出します。

(どうしたっていうんだろう)

 ベッドから立ち上がると、頭の中にパルフォじいさんの笑顔が、ど

っと流れこんできました。

 とてもしあわせそうな笑顔です。

(いけない!)

 シニファンはとっさに部屋を飛び出しました。

(どこだっけ、パルフォさんの部屋は、どこにあったんだったけ)

 学校の生徒たちの部屋は、それとなくそのネコの年にあわせてならん

でいるのを、シニファンは思い出します。

(とおい、とおいよ。パルフォさん、お願いだから待っていて)

 夜の学校の廊下に、シニファンの足音がシタシタとひびきます。

 しかし走っても走っても学校の廊下はまだ長く、シニファンは口のは

しをそっとかみました。

(みつけた)

 どん、どん。

 やっと見つけたパルフォじいさんの部屋の、ドアは開きません。

 ネコの数が足りなかったせいでしょう。プレートを見上げると、

ルフォじいさんはひとりで部屋を使っているようです。

 ノブを回すと、かぎはかかっていませんでした。

(ああ……)