(この子は、これでなかなかガンコなのかもしれない)

 それがシニファンの正直な感想でした。

 すぐに曲をつっかえてしまうくせがルーニャあるようですが、それは

この子の中に課題曲を押しのけて、どうしても表したい強いものがある

せいのように感じられたのです。

 ルーニャにも、まだそれがなんなのかわかってはいないでしょう。

 でもそれはいつか、ビックリばこのようにルーニャの中からそれはと

びだして、きっとほかのネコたちをおどろかせ楽しませるでしょう。

 そのなにかが、ルーニャの中のかたくなった心をつきやぶったそのと

きに。

 くすっとシニファンが笑うと、ルーニャはうわがけをさらりとならし

て、寝返りをうちました。

 耳をピンピンと二、三度動かし、せなかのとらもようをひとうねりさ

せると、またすうすうと寝息をたてます。

 シニファンは、ゆっくりと首をかしげます。

(そう、やっぱりこの子のうしろすがたには、どうも見覚えがあるよう

な気がする)

 でも孤児院にはルーニャのようにおっとりとした子は、ひとりもいま

せんでした。

 おかあさんがつとめていた工場でのことは、もうよく思い出せません

が、そのころのルーニャはまだ、よちよち歩きのあかちゃんだったはず

です。

(ああ、思い出せない。気のせいかしら)

 シニファンはこんどははんたいに首をかしげて、しきりに考えこんで

いました。