それからもシニファンのすごす日々は、すこしもかわりません。
先生とのレッスンが終わるといつものように時計台の機械室へいき、
こころゆくまでバイオリンを弾いてから、夜おそく部屋にもどります。
もどった部屋にはいつも、ルーニャがすやすやと小さな寝息をたてて
ねむっていました。
(小さな子ネコって、こんなにかわいらしかったかしら)
シニファンは月明かりがうっすらと入る部屋で、自分のベッドにこし
かけ、ルーニャの寝顔をあきずに見ていました。
小さくあけた口とそこからほのかにのぞく白い歯と、今にも開きそう
なうすいまぶたは、たいへんによくできた猫形のようです。
枕元には彼自身の、銀の三日月形のバイオリンがたてかけられていま
す。
(そうだった。この子もバイオリンを弾くんだ。こんな小さいのに、た
ったひとりでがんばって)
シニファンはすこし前にぐうぜん廊下で聞いた、ルーニャたちの演奏
を思い出しました。
ドミニクはあいかわらずいたずらっ気たっぷりで、先へ先へとすすも
うとするしっかりとした演奏ぶりです。
パルフォじいさんのはたいへん堂々としていて、うまいへたを超えて
聞く者にうったえるもののあるたしかな演奏でした。
そしてルーニャは。