(どこかで会ったかしら)

 とまどっているシニファンの瞳の中に、ふりむいた子ネコの明るい笑

顔がとびこんできます。

「シニファン、よろしくお願いします」

 まっ赤なほっぺたのルーニャがさし出した手は、とてもあたたかでし

た。胸の中までも、じんわりとあたたかくなっていくようです。

(かわいらしい子だなあ)

 シニファンはまぶしいものを見るように、目をぱちぱちとさせると、

ルーニャにこくっとおじぎをしました。

 

 

 学校の中の案内をするため、シニファンはながい廊下をルーニャとい

っしょに歩いていきました。

 ルーニャは大きなボストンバッグをもって、シニファンのあとをとこ

とことついてきます。

(バッグをもってあげた方が、いいのかしら)

 そう思いましたが、シニファンはバッグに手をのばすことができませ

ん。

 はずかしかったせいもありますが、そうしない方がいいような気もし

たからです。

 まもなくルーニャをむかえる部屋の前へきました。

 

  シニファン & ルーニャ

 

「……」

 シニファンはドアの前のプレートをさして、息をつまらせました。

(そうか、ぼくはしゃべれないんだ)