「よし、譜面の方はここまでにして、こんどは音楽堂の説明をしよう」
「ああ」
ルーニャが譜面をしまうと、こんどはドミニクが青い皮袋から出した、
おりたたまれた大きな紙を広げます。
「ここが舞台。ここがひかえ室。この四つあるひかえ室の、いちばん右の部
屋のいちばん左の大きな鏡をはずすと、うしろがかくし廊下になっている
から……」
「うわあ、すごいな」
ルーニャは口をぽかんと開けて、図面を見入っています。
シニファンはすこし寂しそうな顔をして、大きな紙を見つめていました。
「ほんとに、なんといっていいのか。きみだけじゃなく、おやじさんにとっ
ても、カカラドさんサムラさんの、ふたりのお兄さんにとっても節目になる
大切な仕事だろう。それなのにこんなことをしてもらって……」
しんみりとしているシニファンに、ドミニクは顔をあげて大きな声で笑いま
した。
「なーにいってんだい。三猫にこの話をしたら、どいつもこいつも大のり気、
ふたつ返事でやってくれたさ。特にカカラド兄のよろこびようったら、な
かったぜ」
「だったらいいけど」
「いいんだよ、ヤツらのことは。それにこいつはおれにも、大いに得にな
る話だしな」
ドミニクは、なにやらいみぶかげにニヤニヤしています。