「ああそうだ、シニファンは学院の会議だから、すこしおくれるって」


 やはりせなかがごりごりしたのか、ルーニャは立ち上がってソーセージ

を本だなの上にあげながらいいました。

「ああ、あの必ずのびる学院の会議か。いつもごくろうさんなこった。

なまじっかまじめだからって、学院の年よりどもにこき使われて」

 ドミニクはふふんと鼻をならします。

「だけどそういうドミニクだって、演奏会さえなければ毎週末『ドールハウ

ス』でバイオリンを弾いているんだろう?」

 わざとまじめな顔でルーニャがいうと、ドミニクは口をとがらせて答えま

した。

「おれのはあいつのボランティアとちがって、れっきとした金もうけさ。

それもきれいなおねえちゃんの踊りをみながら、またたび茶だって飲み

放題のね。これでいかないやつがいたら、顔がみたいくらいだよ」

「おねえちゃんはともかく、またたび茶はいいかげんにしてくれよ。つめ

にふるえがくるぞ」

 ルーニャは、キュッとまゆをしかめます。

「ったくもう、わかってるって。いやそれより、譜面、譜面と」

 ドミニクはルーニャのいうことなどまったく気にかけない風で、目の前

の楽譜に目を通しました。

「おお、これはすごい! おまえ、よくこんなこと考えつくなあ……

ほお、ほお、ほお、いやあ、これはしかし……」