「まだ終わりではないのですよ。こんどはちょっと痛いですけど、

がまんしてくださいね」

 ふたりがミルドラ校長先生のあんないで校長室に戻ると、二つのい

すが用意されていました。

「長い順に、ヒゲを三本ぬきます。すぐに終わりますから、目をつむ

っていてください」

 男の先生方がひとりづつ、ルーニャとパルフォの横につきました。

ちょっとこわくなったルーニャは、力いっぱいまぶたを閉じています。

(いたあいっ!)

 三本のヒゲはあっという間にぬかれてしまいました。が、ルーニャ

はこんなにいたい思いをしたのは生まれてはじめてです。パルフォじ

いさんも、ちょっとだけ目尻になみだを浮かべています。

「はい、終わりました。あしたの練習の時間に、ふたりにそれぞれの

バイオリンをお渡しします。部屋にもどってけっこうです。どうもご

苦労さまでした。」

 ふたりはペコリと頭を下げると、校長室を出て行きました。

「でもあんなに痛かったのに涙一つみせないんだから、ルーニャはた

いしたもんだなあ」

 パルフォじいさんは、ヒゲのあたりを手でさすりながらいいました。

「そんなことないですよ、パルフォさん」

 ルーニャはてれて頭をかいています。

「いやいやルーニャ、わしのことはパルフォと呼びすてにしておくれ。

そしてこんなおじいさんでかまわなければ、友だちになってくれんか

なぁ」

「そんなこちらこそお願いします、パルフォさん……じゃなくて、

パルフォ……でしたっけ」

 ふたりは笑いながら、二度目の握手をかわしました。

 

 

 部屋にもどったルーニャは、すこし不安になりました。同じ部屋の

シニファンが、いつになってももどってこないのです。

 時計の針は、もう十時をさしています。

(シニファンはどこへいってしまったんだろう。ぼくのことが気にい

らないのかしら。教えてほしこともいっぱいあるのに)

 ベッドの中で、ルーニャはなんどもねがえりを打ちました。シニフ

ァンがもどるまでなんとか起きていようと思ったのですが、今日一日

あまりにたくさんのことがおこったせいか、いつしかルーニャは深い

眠りに落ちてしまったのでした。