ネコのバイオリン弾き
石だたみの広場を満月がさえざえと照らしていました。
ネコのバイオリン演奏会の最後の演奏は、ぬれたように黒い毛なみの
天才バイオリニスト、シニファンがおこないます。
広場は水を打ったように静まりかえっています。
シニファンのつめが、三日月型をしたバイオリンの糸にゆっくりとふ
れました。
水のおもてを波紋が広がるようにバイオリンの調べが広場をながれま
す。集まったすべてのネコの心とヒゲがピンとはりつめてやがてふるえ
ました。
まん丸なお月様さえ、東から西へと動く足を止めています。
動いているのはシニファンただひとり。
あとはだれもが、ただじっと彼の演奏に聞き入っているのでした。