ルーニャとドミニクのバイオリンの音色が、広場の月明かりをぬっ
てやさしく流れていきます。ルーニャは夢中で演奏していました。
楽器を演奏するものは、一つの音を奏でては次の音のことを思い、
またその音を奏でる間に次の音のことを考え、まるで足をかけたとた
ん崩れていく階段を走ってのぼるように、音と音の間で心の大冒険を
しているものなのです。
ルーニャとドミニクの課題曲が終わりました。客席からは、激しい
雨のような拍手が聞こえてきます。
ルーニャのおとうさんとおかあさんも拍手をしています。妹のミー
シャもにこにこと笑っていました。
ルーニャとドミニクはいつのまにかいっぱい汗をかいて、満場のお
客さんに深々とおじぎをしていました。
「おい、ルーニャ」
演奏が終わったあと、ルーニャは楽屋でドミニクに声をかけられま
した。ふりむくとこちらにむかって手を差し出しています。
「だいじょぶだよ。もうがびょうなんかかくしていないから。今日ま
でほんとにおまえはよくがんばったと思う。感心した。よかったら、
おれと仲直りしてくれないか」
ルーニャはドミニクの手を強くにぎりかえしていいました。
「こちらこそ、めいわくをかけて悪かったよ。ゆるしてくれるかい」
「もちろんだとも。今日からおれたちは、友だちになるんだから」
楽屋には、せんぱいに弾くバイオリンの美しい音色が流れていまし
た。ふたりの子ネコは、それを聞きながら心から楽しげに笑い会って
いるのでした。