今日は演奏会の当日です。
ルーニャは、心臓が口から飛び出すのではないかと思うほど、ドキ
ドキしていました。
あれからルーニャは、やっとのことドミニクと演奏する許しを、先
生から得ることができたのです。
舞台のそでからそっと客席をのぞくと、ゆたかな月明かりの中、お
とうさんとおかあさん、それに妹のミーシャをみつけることができま
した。
ルーニャとドミニクは、演奏会のいちばん最初に曲を弾くことにな
っています。
(神様、パルフォ、どうかぼくたちをお守りください)
ルーニャは舞台に上がる前に、目をつむってそっとお祈りをしまし
た。
「ルーニャ、もっともっと、楽しんでバイオリンを弾いておくれ」
たしかにパルフォの声でした。驚いて目を開けましたが、もちろん
パルフォはどこにもいません。
(ありがとう、パルフォ)
ルーニャは勇気を出して、ドミニクとともに舞台へ向かいました。
舞台の上から客席をみわたすと、お客さんはまるでおなべの中では
ぜるポップコーンのようにざわめいていました。
(だいじょうぶ。ぼくにはパルフォがいる。それに……)
ルーニャはおとといの夜の、シニファンとの楽しかった演奏を思い
出しました。そして今日もあの時のように、楽しんでバイオリンを弾
こうと心に誓います。
さあ、演奏開始です。ルーニャはドミニクと見つめあって「1、
2、3」とカウントをとりました。どんなに仲が悪くてもふたりで演
奏するときは、奏者は心を通い合わせていなくてはならないのです。
ドミニクも緊張しているのでしょう。つめがプルプルとふるえてい
ました。