「先生、もうルーニャと組むのはごめんです。これ以上こいつの演奏
が仕上がらなら、演奏会では別々に演奏させてください」
ドミニクは練習を見てださる先生に、真剣な顔でたのんでいます。
ルーニャはパルフォが亡くなってから、よりいっそう練習にはげみ
ました。しかしちゃんと弾こうとすればするほど、どうしてもとちゅ
うで曲がつっかえてしまうのです。ルーニャは自分でも、ドミニクが
怒るのはむりないと思いました。
演奏会は、もうあさってにせまっているのです。
先生は腕組みをして考えこんでいます。
「ドミニク、明日までなんとか待ってくれ。明日になってもルーニャ
の曲が仕上がらなかったら、きみがひとりで演奏会に出られるよう、
校長先生に相談してみよう」
「きっと、お願いします」
「じゃあ、ドミニクとルーニャは別々に練習しよう。ドミニクはここ
へ残って、ルーニャはとなりの部屋へいってくれ」
「わかりました。先生」
ルーニャはとぼとぼと練習室を出て行きました。
(こんなことになってしまうなんて……)
となりの部屋にうつったルーニャは、課題曲をなんども練習しまし
た。が、どうしてもとちゅうで曲をつっかえてしまうのです。
(演奏会に出られなくなってしまうかもしれない)
ルーニャはあせりました。なんともいえずくやしい気持ちでした。
しかし、うまくなるためには練習するしか手だてはないのです。
いたむ指をズボンでこすると、ルーニャはふたたび課題曲を弾きは
じめました。