つぎの朝ルーニャは、ものすごいいきおいでゆさぶられて目をさま

しました。

 ゆさぶっていたのはシニファンです。

「え、シニファンどうしたの?」

 シニファンは寝ぼけまなこのルーニャの腕を、ぐいぐいひっぱって

ろうかを歩いていきます。いつもとは別人のようにけわしい顔です。

 いったいどこへつれていかれるのかしらと思っていると、シニファ

ンはパルフォじいさんの部屋の前でとまりました。

 たくさんのネコが、ドアのまわりに集まっています。泣いているネ

コも何匹かいました。

 ルーニャは頭の中がまっ白になり、集まっているネコをかき分けて

部屋の中へ入っていきました。

 ベッドの上にはパルフォじいさんが横たわっていました。うっすら

とほほえみをうかべていて、眠っているようにしかみえません。

 目を赤くしたミルドラ校長先生がきて、ルーニャにいいました。

「ルーニャ、パルフォは神様のところへ召されていきました。そばに

よってお別れをいってあげてください」

 ルーニャは目の前で起こっていることが信じられません。でも、

近づいてパルフォじいさんの手にふれると、はじめて会った日にかわ

したあくしゅの時のぬくもりは、もう残っていなかったのです。

「パルフォ、もう一度目をあけてぼくを見てよ」

 ルーニャはパルフォじいさんの体にすがって、自分でもおどろくほ

どはげしく泣きました。あとからあとからでてくる涙は、とどまるこ

とを知りません。

(ぼくは自分のことばかりに夢中で、パルフォのことをぜんぜん気づ

かってあげられなかった。こんなに体のぐあいが悪かったなんて)

 体をふるわせてはげしく泣くルーニャに、ミルドラ校長先生はやさ

しくいいました。

「ルーニャ、パルフォの顔をごらんなさい。とてもおだやかな、いい

お顔をしているでしょう。パルフォはあなたがそんなに悲しむことを、

きっと望んではいないと思いますよ。さあ、涙をふいてお別れをおい

いなさい」

 ルーニャは腕でごしごしと涙をふくと、パルフォのほほにそっとキ

スをしました。

「さようならパルフォ。どうかやすらかに眠ってください」

 やがて神父さんがやってきて、パルフォは棺にいれられ、部屋を出

て行きました。おそうしきは、ふるさとの村でおこなわれるのです。

 ルーニャは学校の門のところに立って、パルフォの棺が乗った馬車

をいつまでもいつまでも見送っていました。