「ここはどこだろう?」

 シニファンは青空にぽっかりとうかんでいました。

 まぶしい太陽の光。ここちよい風。よくそうじされた石づくりの町な

みのむこうには、空をまねたようにうす青い海が遠く広がっています。

「ああ、おかあさんといった市場のちかくだ」

 シニファンはそのまま地面近くに下りていって、ふわふわと市場の方

へむかいます。

「あれ、おかあさん?」

 石だたみの道には見なれた美しい黒い毛なみのネコのうしろ姿があり

ました。そのネコはシニファンと同じぐらいの年の子ネコの手をひいて

います。シニファンはつつうっと飛んでいって、ふたりの前にまわりし

た。

「うわあ、やっぱりおかあさんだ。おかあさんと……え、ぼ

く?」

 それはやはり、おかあさんとシニファンの姿でした。ふたりはいかに

も楽しそうに話をしながら、日のあたる坂道をゆっくりと下りていきま

す。

「だめ、だめだよ。そっちへいっちゃあぶないんだ」

 シニファンはいっしょうけんめい、目の前にいるおかあさんや自分に

話しかけます。でもどうやってもふたりには声が聞こえないのです。

 そのうちもうひとりのシニファンは、目をぱっとかがかせて市場にむ

かって走り出しました。

「どうしたらいいんだろう」