(いたいよ)

 シニファンはわけもわからず、たたかれけられました。すばしこいシ

ニファンも、こうなってはどうすることもできません。

(どうして、どうしておかあさんは、迎えに来てくれないのかしら?)

 子ネコたちの頭の上には、まあるくかこまれて切り取られた青空がの

ぞいています。

(いたい、いたいよ)

 まるで自分の気持ちが、そのまま体にあらわれているようです。

 たたかれたりけられたりは、ずいぶん長い間つづいたように思われま

した。

 しばらくしてカランカランとおやつの時間をしらせる鐘の音が聞こえ

てくると、子ネコたちはぱっとその場からにげだしました。

「猫形(にんぎょう)みたいでぜんぜん動かない。おもしろくない」

 シニファンからはなれたあと、灰色ネコは小さくつぶやきました。 

 だれもいなくなった孤児院の中庭には、ぐったりしたシニファンだけ

が横たわっていました。